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「オーロラビジョン 1」

桜の気配はまだ遠い三國の住処ですが、全国の景勝の話題を聞くにつけ、
わくわくが留まるところを知りません。

お花見までには仕事が落ち着いていることを願って・・・、というか、
絶対、おちつかせてみせるぞ・・・くそぅ・・・ッ


つづきは原作世界銀新です。
かんなり前に書いていたものを修正してアップ。





 
どうやって今まで触れていたのか
 
今はもう思い出せない
 
 
天邪鬼な俺は、当然ソレを持て余す
 
 
 
 
オーロラビジョン 1
 
 
 
 
 ウチにいるダメガネは、ナンといってもダメガネだ。
 
 家事をやらせればまぁ、まだ見れるが、仕事となればからっきしだし。
 一から覚えて十へ到達するまで、ハンパなく時間かかる。
 そんなんじゃ、人生において多くの時間を無駄にするんじゃないかって、見てるコッチは心配になるってもんだ。
 
 だから、いちいちメンドイことにかまってないで、俺だけ見てればいいじゃんって思うのは当然なわけで。
 我ながら素晴らしい発想だと思う。うんうん。
 
 
 
「おい、新八。コッチはいいから先、ウチに帰ってろよ」
「え、・・・でも、」
「晩飯と、フロ。準備しとけよ。銀さん働きっぱなしで、ドッロドロのペッコペコだからよ」
「・・・さっきおはぎもらって食べた気がするんですけど・・・分かりました。神楽ちゃんは・・・」
「あぁ、買出しもあンだろ?連れてっていいぞ」
「分かりました。じゃあ、お先に」
「おう」
 
 そういってきびすを返す少年に二階の屋根で日向ぼっこしていたらしい桃色の少女が降ってくる。
 瓦屋根の修繕は度々持ち込まれるので、今ではこいつらだけでも単身、仕事に向かわせる事が出来るモノの一つだったが、他に仕事があるでもなし。仲良く三人、揃いの作業着で出かけたため、若干一名暇を持て余すほどにはスムーズに片付いた。
 まぁ、当然、神楽は瓦割りを披露してくれたし?俺はその破壊力抜群なお約束に素直にノったんが、新八が声を張ることは一度もなかった。
 というのも、基本、複数のことを一度にできないようにできている少年は、仲間の奏でる盛大な破壊音にも見向きもせずに一心に依頼主であるところの棟梁の手元を見ていたのだ。あまりに熱心なので気をよくした棟梁は無残な小片と化した瓦に対するお咎めを、知らず、半減させていた。
 真剣な新八の手元には小振りなペンとメモ帳。そんな必死にならきゃいかんモンかぁ?と、基本器用で何でもできる俺は多少呆れた。
 
 
 とはいっても、その誠実さは捻じ曲がった俺でも好ましく思える、正直な話。
 数多くの、長所を持つアイツの、最も輝いて見えるソレ。姉に対して、剣術に対して、旧友に対して、・・・死に逝く者に対して少しの分け隔てもない。
 無意識にもたらされるソレに酷く安堵を覚えるのは俺だけではないはずだ、きっと。
 鬱陶しく思うような野郎は俺が叩きなおしてやるから、ちょっと、そこに正座しなさいってなもんだ。
 
 
***
 
 
 新八がいなくなったことで怒りがぶり返したらしい親方に、後片付けまで手伝わされて、すっかり遅くなった。
 というか、流れで飲みに行ったからというのが正しい。まぁ、割り勘なんかしないで、酔った親父の財布を抜き取り、一応、手を合わせて、ありがたくおごってもらったんだが、よくある話だから気にしない。
 飲んでる最中、あのオヤジはいやぁ、新八君はいい子だよ、銀さん、大事にしてやらなきゃ嘘だよ、ホント、って、おんなじことをうだうだ、うだうだ。神楽のことも褒めてた。あんなに破壊の限りを尽くすじゃじゃ馬を、だ。
 コイツも結局、新八までは行かずとも甘いんだろう。だから、いつまでたっても冴えないで、そんなにハゲ散らかるんだよ、どうせ、女房の尻に敷かれてるんだよコレ、と、まとまらない思考の俺は、大分酔っているらしい。
 
 おぼつかない足取りで、電柱さんと何度もキスをしながら辿りついた家には、ぼんやりと光が灯っていた。
 俺は少しも疑問を持たないで、一層ぐらんぐらんになりながらその光を目指す。
 
「て~でぇま~。銀さんのお帰りだよ、っとぉ」
 
 ひんやりした廊下の、年季の入った木目が美しい。
 そんなことを思いながら伸びていると、とたとたと、聞きなれた足音が。
 
「・・・銀さん。アンタって人は毎度毎度・・・」
 
 溜息と共にやはり聞きなれた台詞。
 代わり映えしないぞ。そんなんだからお前はツッコミなんだよ。俺みたいに華麗に面白い事のひとつやふたつ言ってみろってェ。
 
 こんなに思考はすらりと回るのに、床に押し付けた顔面はピクリとも動かない。
 きっと今の自分は最高潮にだらしのない顔をしているんだろうな、と思うと笑えて来た。
 
「何笑ってんスか、酔っ払い」
 
 そういって、新八は俺の身体を仰向けにして何とか肩を差し込んで立たせようとしている。
 うんうん言ってる新八がかわいそうで、自分でも力を入れて立てることを思い出した。
 そうして2人で漸く台所に辿りつく。
 差し出されたコップを受け取って、新八に支えられながら水を飲む。
 あんましうまいんで急いで飲んだら、口の端から少し零れた。
 
「あぁあぁ、アンタはまた」
 
 袖で俺の口を拭う新八の顔は、なんでだかよく見えないが、とにかく笑っていたように見えた。
 それがまるで呆れられているようで、新八のくせに俺を笑うとは何事だと、刷り込みのような感情が生まれた。
 でも、その更に奥にある俺の根幹の、いつもは巧妙に隠している部分が、ほんのりと反応する。
 それはまだ誰も知らない、俺だけの一等大事な感情。俺はソレをふと、行動へと昇華させてみようと思った。
「・・・新八」
 
 呼んだ声は思いのほか掠れた。かまわず首元へ擦り寄れば、腕の中の身体はピクリと強張った。
 白い肌はうっすらと産毛を纏い、ビロードより、シルクより、断然気持ちがいい。とおもう。よく知らないけど。
 冷えた首筋を下へと辿れば、薄い寝巻きに守られたぬくい体温を持つ暗闇。
 俺は迷わず、そこに鼻先を突っ込んだ。
 
「・・・っ、・・・銀さん・・・くすぐったいです。止めてくださいよ、ちょっと」
 
 くんくんと、まるで犬のように新八の匂いと、薄い皮膚の感触を楽しんでいると、やんわりと押し返された。
 
「・・・もう、・・・酔いすぎですよ、銀さん。そういうのは、お店でやってきてください」
 
 神楽ちゃんもいるんだし、と続いた新八の言葉は銀時の耳には届かなかった。
 
(俺がソンなんするわけねーじゃん。お前じゃない、店のねェチャンに擦り寄るなんてみっともねェマネ――)
 
 
 先程の感情が湧きあがったのと同じ場所から、今度は別のものが顔を出す。
 よく見知ったソレは、簡単に名前をつける事が出来る。――怒り、というヤツだ。
 
「っ・・・うわッ、ちょッ――」
 
 肩に回した腕はそのままに、膝裏を掬って持ち上げてやれば、簡単に新八の身体は宙に浮いた。
 いわゆる、お姫様だっこだ。ここには、お姫様も、王子様もいねェけど。
 ぐらんぐらんする床を、転ばないように進む。
 新八は何すんですか、ちょっと、危ないって、何て言いつつしっかりと俺の着流しの胸元を握っている。
 ・・・ソンなんしなくても、落しゃあしないのに。
 
 
 
 和室に引いてあった布団の上に下ろして、真上から眼を覗き込む。
 
「俺は、言うほど、酔っちゃいねェよ」
 
 わかったか、とばかりに言い含めると、怯えと驚愕を浮かべながらカクカクと小さく頷いた。
 わかりゃあいいんだと、表情を緩めて覆いかぶされば、本日二度目の声にならない悲鳴が上がる。
 いい匂いにつられて、華奢な身体を包み込む。さっきみたいにどかされる気はない。
 
 しっとりと汗ばんできた肌へと、今度は手を滑らす。
 誘われるように袷を開けば、思い出したように抗議の声が上がった。
 
「――銀さん、いい加減にして、・・・セクハラで訴えますよ」
 
 ぐいぐいと突っ張ろうとする腕はしかし、無駄に終わる。
 我が家が誇る普段の気丈なツッコミはなりを潜め、震える唇は切れがない。
 それは、全然、イヤだの顔じゃないよ、新八君。むしろ、・・・――
 
 たがが外れると、もうダメで。
 見知った欲でもって、コイツを暴きたくなる。
 
 左手を深く、寝巻きに潜らせて、きめの細かい素肌を楽しみつつ、右手を帯へと伸ばすと新八は焦りだした。
 やめて、だの、言ってたのが、どけよ、いい加減にしろよ天パコラ、へと変化して、ガッチリ俺の右手を掴んだ握力は、ちょっとびっくりするぐらい強かった。
 嫌がられると、むきになるのは性分です。観念しなさい、新八君。
 そう思って一気に両手を捕らえて、頭の上へと持っていく。
 俺を防ごうなんざ、百年はえーよ、と、得意になってのぞいた顔は、恐怖と、おそらくは怒りで強張っていた。
 そうして息を吸い込むと、新八は神楽が起きそうなハラハラする声量で言った。
 
 
「――僕に、触らないでください」
 
 
 
 あいかわらず、上気させた頬は、林檎のように美味しそうで、そこだけが平和だった。
 あぁ、そう、とか、何とか呟いて起き上がった俺は風呂に入って、それから和室へ戻った。
 
 その頃には新八はいなくって。ウチのどこにもいなくって。
 また、あぁ、そうか、と思って、俺は布団へもぐりこんだ。
 
 
09/05/30
 
やっぱり長くなるナァ・・・;

ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございます。
続編もおおいそぎで加筆修正しておりますので、もうしばしお付き合いください。

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