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「オーロラビジョン 2」

「オーロラビジョン」の続編です。

直してて思ったんですが、この銀さん正気じゃない・・・

なんというか、多少壊れ気味の銀さんが楽しそうに好き勝手しているので、
坂田スキーさんで余裕のある彼が好きな方は注意してくださいませ。
 

 




 
オーロラビジョン 2
 
 
 
 スカッと晴れた気持ちのいい空。町中に春の陽気が染み渡り、世間が一斉に賑わいだす。
 そんな洗濯好きの主婦が喜んで家中から洗濯物をかき集めそうな日には珍しく、万事屋からは何の物音もしなかった。
 近所では有名な出来た主夫、志村新八が一向に洗濯を干しにベランダに顔を出さない理由は、一人の訪問者によって知らされることとなった。
 その訪問者は血相を変えて文字通り万事屋に飛び込んできたお妙、その人だった。
 
「銀さん、起きてください。神楽ちゃんも。こんなマダオと同じ生活してたら、股間から腐って死んじゃうわよ」
 
 銀時を蹴り起こして神楽の寝室の扉を開けて、万事屋に朝を知らせたお妙は失礼すぎる暴言を吐いた。
 おバカで正直な娘はマジでか、なんていいながら洗面台へと走っていく。
 変なこと教えんじゃねェと朝は低迷気味のテンションを更に下げて思ったが、気が立っているらしいので心に仕舞っておくことにする。
 
「・・・なんでお前が朝っぱらからここに居んの。つぅか、新八は?」
 当然のことと思って訊ねるとお妙は俺の胸元を捻り上げつつ、笑顔で言った。
 
「ということは、あなたも知らないんですね?ホントどいつもこいつも使えないわね」
 
 ねじり上げた腕と心配そうな声音は見事にマッチしてなくて。俺は久々に生理的な恐怖に戦慄した。
 
 
  ***
 
 
 
「じゃぁ、なに?アイツ無断外泊デビューしたの。新八のくせに」
 差し向かったソファで鼻をほじっていた俺は、次の瞬間には床に沈んでいた。
 叩きつけられた背中の鈍痛がハンパない。いつもより、な?・・・それだけ余裕がないんだろう。
 
 お妙の話はこうだ。
 夜、仕事を終えて帰宅していつものように就寝したが、朝になっても新八の気配がない。
 いつもなら足音を立てないように気配を殺しながら移動する可愛い気配(なんかコレって、新八の苦労が報われていない様でかわいそうだが、ここは黙って聞いていた)がするのだが。不審に思って家中探したがどこにもいない。
 万事屋にとまったのかと思って電話しても誰も出ない。普段なら泊まるときは事前に連絡するし、しなくても朝には電話の一本、新八から入るのだが、待てど暮らせど一向にこない。それで手っ取り早く安心するために乗り込んできたとうことらしい。
 友達の家にでもいるんじゃねェの?タカチンとか、といってみたがソレもないそうで。
 
「ここに来る途中その、タカチンコ?も含めて思いつく限りのチンコの家には寄ってきたんです。なのに、どのチンコも知らない、何も知らないしか言わなくて。ホント使えないチンコばっかりだわ」
「いや、使えないチンコは言い過ぎ・・・」
 
 たたき起こされたであろうその新八のチン・・・じゃなかった、友達に同情しつつ、ほんのりツッコンでみた。
「あねごぉ、心配することないネ。きっとその辺で落とした眼鏡探して地べた這いずり回ってるヨ」
神楽が慰めともつかない慰めをし、三人揃って俺が作った朝食を食べて、その眼鏡を探すため、江戸中散り散りになった。
 
 
 
 
 その日はホントによく晴れて、洗濯しそこねた新八はきっとハンカチを噛んで悔しがるだろうな、と思った。
 と、ふいに視界が陰った。見上げると神楽のかさと、酢昆布と、呆れたような苦い顔。
 
「銀ちゃん、まじめに探さないとダメガネがどんどんダメになってしまいには海に落ちるアルヨ」
「そうかもなぁ・・・」
 
 新八を考えると、そんなドジも平気でしそうな気がする。それか、奥深い山の中で一人うろうろと・・・――
 ぎしり、と音を立てて神楽が俺の足元に腰を下ろした。
 
「すんませーん。勝手に俺のオープンカーに乗らないでいただけますぅ?」
 
 そういうと、哀れむ視線がよこされる。暗に、「コレをオープンカーと呼んで生きていくのか。強く生きろよ、マダオ」といっているのが分かる。分かる自分がカナシイ。
 俺達が乗っているのは、通称”武蔵”と呼ばれるおっちゃんの自慢のマイホーム。所謂台車だ。
 案外居心地のいいその荷台の縁に背をあずけ、ゆっくりと流れる景色を見るのもなかなかオツなもんだ。
 
「・・・銀ちゃん、定春の鼻の調子悪いみたいでヅラのときみたくいかないネ」
 
 思い出したように言う神楽は若干憔悴しているように見えた。慣れたとはいえ、一気に強さを増した陽射しにも、堪えているのだろう。いつの間にか太陽も南中に近い。
 
「・・・お前、一旦ウチに戻れや。ババァに飯たかってこい」
「・・・そうするアル。いくヨ~、定春」
 
 遠ざかる小さな背中から視線をずらせば、定春と眼が合った。
 そこで俺は有無を言わせぬ殺気を放つ。 余計なことはするな、と。
 
 表情は変わるはずもない。しかし、感情に正直なふさふさの尻尾だけが、ピリリと緊張しているようで。
 腰を上げ神楽のあとをおった定春は、ぐりぐりと神楽の背に甘え、頭を撫でてもらいながら一度、嬉しそうに尻尾を振った。
 
 
 雑多な人ごみに消えていく紫の傘と巨大な白は、ハレーションで俺の目を焼いた。
 
 
 
 *
 
 
 武蔵のマイホームが俺を乗せてたどり着いたのは都会の真ん中にある寂れた住宅地の一画。
 殆ど人が住んでいない前世代型のアパートの群れが、薄ら寒い空気を吐き出しつつ乱立している。
 
「ほんじゃ、あんがとね」
 
 そういって、一緒に運んでもらった荷物をかついでお礼をわたすと、武蔵はまたゆるゆると燃費のよさそうな歩みでもって、来た道を戻っていった。
 
(・・・まさか、犯罪の片棒担がされたとは思ってないんだろうな)
 
 新八の家の倉庫にあったゴザでもって簀巻きにした新八が人目につくことなく目的の場所へと着いたことに安堵する。
 ひとまず、コイツを解こうと、新八を担ぎなおして階段を上った。
 
 
 
 
 トイレから出ると眠りから覚めた新八が薄い布団の上できょとんとしていた。眼鏡がないせいか随分幼く見える。
「・・・よぉ・・・起きたかよ」
 声をかけると一瞬ビクッとして振り返った。
「・・・銀さん?ここはどこですか?・・・僕は、一体・・・」
 いまいち状況をつかめないんだろう。ソレもそうだ。ゆっくり近づいて新八を寝かせている布団の傍に腰を下ろす。
 
「ここは、銀さんの隠れ家のひとつです。今日は新ちゃんのために特別解放してみました」
「・・・はぁ?隠れ家って・・・」
 
 8畳ほどの広さの1LDK。トイレ、風呂付。南向きの窓。そして何よりこの部屋の“売り”なのが・・・――
 
『・・・ジャラリ』
 
 新八が眼鏡を探して動いたことで硬質な音が室内に響いた。
 
「え?鎖?・・・ッて、何で僕、手首に鎖がついて・・・」
 
 うろたえる新八に教えてやることにした。今回の俺の妙案。パチンコなんかよりよっぽど楽しくて、実り多いこと間違い無しだ。
 
「そりゃァもちろん、新八を逃がさないために決まってんでしょ。俺が望むものくれるまで、外す気はねェからそのつもりでな。あ、でもフロとトイレは問題なく出来るぜ。銀さんその辺はちゃんとしっかり調整しといたから」
 
 安心しろ、といった言葉と笑顔は新八に届いているのか。
 頭がしっかりしてきたらしい新八は、昨夜の出来事と、自分の置かれた異常な状況を反芻し驚愕に目を見開いていた。
 ソレに俺の顔は自然と一層笑みを深くした。どうゆーわけだか。
 
 
 
***
 
 
 昨夜、新八が万事屋を後にしたことを認識しながら深く布団に沈みこんだ俺は、だんだんと、ソレを許しがたく思うようになっていった。そして、とぼとぼとした足取りで自分のうちにたどり着き、正に玄関をくぐろうとした新八に追いつき、峰打ちで昏倒させたのだ。
 声もなく崩れた身体を今度はおんぶして、倉庫を開き、一晩置いて、今朝、取りに戻った。一通り、今回の計画を遂行させる材料をそろえるため、真夜中の歌舞伎町を疾走した俺に、俺は賛辞を送りたい。
 
 
 
 そうして、今目の前に問題の、意識のある新八がいる。
 
「逃がしゃしねェよ」
 
 思った言葉が口をついて出た。恐怖を浮かべた新八の視線はついっと、俺とは布団をはさんで向こう側の窓に向けられた。向こうにベランダが見えるありきたりな団地の風景。だが実際、それは全く通常とは異なる、俺にとっちゃ重要な“売り”をもった風景だ。
 
「窓から逃げようとしても無駄よ?新ちゃん。その鎖がついてちゃ、ビッミョ~に届かないんだよね、コレが。嘘じゃねーぞ?ソンでもってコレ」
 
 そういいながら窓の傍に立ち、徐に木刀を振り上げて、思いっきりガラスに叩きつける。
 後ろで、ひっと、新八が息を飲む声がした。しかし、ガラスはダアァンという音を響かせただけで罅ひとつ入っていなかった。
 
「すげぇだろ?コレ、防弾ガラスな。しかも完全防音で、ダブルロック。元は命狙われたヤバい組織の関係者かくまうのに造られた部屋なんだけどよ、まぁ、ちょっとしたつてで借りてみました。なんたって打ってつけだしな・・・――」
 
 ―――あぁ、今俺は暗く笑っているんだろうな。怯える新八の様子で鏡を見るより明らかにそれが分かる。
 封印したつもりでも、確かに存在し続けていた獣を誑かして、再び開放してみました。
 ・・・ソレもコレも、お前を思えばこそなのよ?そこんとこ分かってる?
 
「・・・しんぱち」
 
 思うより早く、木刀を放り投げて、新八との距離を詰める。
 
「ッ銀さ、・・・」
 
 呼ばれた名前ごと、唇を掻っ攫う。
 その感覚に、獣が胸の辺りでグルルと喉を鳴らした気がした。
 
 
2009/05/30

前振りの割りに大した事ないじゃんと思った方がいたら期待させてごめんなさい;
どうもウチの坂田は消極的で臆病か、本能と仲良しな行動派か、どっちかになるみたいです。
本家のような余裕は何処・・・

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