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「オーロラビジョン 3」・完結

お待たせしました、「オーロラビジョン」の完結編です!!
・・・いや、待てよ自分・・・待っていてくれた人がいるなんて限らなry)

・・・と、いうわけで、前回いい具合に壊れた坂田がどのようにオチをつけてくるのか!?
気にしてくださっていた稀有な方はつづきからどうぞ~

>>(追記)題名を間違えていたので修正しました;
混乱された方がいらっしゃったらすみません。






 
 
 
オーロラビジョン 3
 
 
 
「――ッ、はァ・・・銀さ、・・・や・・・っ」
 
 成長途中の柔らかな肌は昨晩と同様、湿り気を帯びて更なる芳香を放つ。
 俺の中の獣はその匂いにつられて一心に貪りつく。恐怖と恥辱に歪む表情も、絶好のスパイスにしかならない。
 
「・・・しんぱち」
 
 熱に浮かされたように、口をついてでる言葉はもはや意味を持たず、
 この身体は外側も内側も、火がついたように熱をもって、いっそ焦げてしまわないかともどかしいぐらいだ。
 
 唇を奪って以降、獣は獣らしく、一心に獲物を味わった。
 着物越しに柔らかな肉に鼻をこすりつけて、思いのまま抱きしめて、思いっきり髪の匂いを吸い込む。
 助手というには大切すぎて、家族というには愛しすぎて、恋人というには拙い未知の絆。
 それを、確かなものにしたいという長く、身の内で渦巻いていた欲望が、今、昇華されて、霧散して、歓喜となって発散される。
 
 
 なぁ、新八・・・――おれは、こんなことでも幸せなんだよ。
 お前の流す涙の一滴一滴がうれしい。
 震える体温が愛しい。
 おまえが荒く呼吸するだけでも、こんなにも。
 心底しあわせで、なぁ・・・新八、・・・お前―――
 
 
「・・・新八」
 
 
 瞑った目を縁取る存外に長い睫毛についた水滴を親指で掠め取る。
 これ異常ないくらい身体を密着させているから、恐る恐る開かれた眼を真上から覗き込むような形になった。
 
「なぁ、触って欲しくないなんて、ウソだよな?」
 
 間近で覗いた目は怯えながらも一心に俺を映していて、再び微かに俺の中の獣が満足げに喉を鳴らした。
 
「・・・なぁって、新八」
 
 揺れる瞳に焦らされて繰り返された問い。
 俺に向けられた新八の真っ黒で大きな目ん玉は俺を通り越して、まるでここではないどこか未来を見ているようで。まるで予言を下そうとしているようでぞっとした。
 ソレは、きっと、俺にとってありがたくない予言。そんな予感に俺は自分を叱咤する。
(否定はいらない、この期に及んで、お前は俺を否定することは赦されない―――赦されるはずがない、だろ?・・・―――)
 
 
「・・・ぼく、・・・僕は、嘘なんて、ついてません」
 
 
 漸く搾り出したらしい返事に意識が再び浮上する。そして浮上した意識はそのまま空中で旋回して違うベクトルになった。
「・・・わかった。嘘は吐いてねぇんだろうな。・・・でも、ホントのこと、隠してんだろ?な?」
 痛い所を衝かれたからなのか、幾分怒気が滲んだのか分かったのか、新八の喉がヒクッと可愛い音を立てて痙攣した。
 
「やっぱりな。なぁ、新八ィ。いい加減、俺を焦らすなよ。俺に、正面きって、好きって、・・・」
 いわせてくれよ、と続けるはずの言葉は、新八の素早い口への平手によって阻まれた。
 
 
「へぶっ・・・!!」
 
 
 そのまま、口元に当てた手が存外強い力で、首ごと押し返そうとしてくる。
 覆いかぶさった体勢から首を押し返られれば、当然、大変つらい体制になるというのは簡単にご想像いただけるだろう。
 
 
「・・・ッぐ・・・しん、ぱ、ち・・・」
 
 なんとか視界の端で手を捕まえて口元から外させる。
 思いもよらぬ反抗に息も絶え絶えに睨み付ければ、新八はたいそう傷ついた顔で、横向きに身体を抱いて丸まっていた。
 それに一瞬にして、肝が冷えた。
 
「新八、おい・・・どうした?なぁ?」
 
 この状況で具合が悪くなるとすれば、原因は100%俺で、全てを心のうちで荒れ狂う獣のせいにして、非道を尽くした自分を今更ながらに責め始めた。
 
「銀さん、僕は・・・アンタに・・・しあわせになってほしい」
 
 震える喉を通って出された声は、やっぱり震えていて。
 しゃくりあげる子供の呟きに近い。
 そんなことを感じながらも、新八の言っている意味と、行動がおよそ結びつかないことで混乱していた。
 
 
 俺は新八と俺が一緒にいる事が幸せに直結していると信じて疑っていなかったから。
 もちろんお互いの、だ。
 だってそうだろ?
 今の、多少歪だとしても、あったかくて、いとしくて、心底大切で、でも時々壊してしまいたくてでも絶対そんなことは出来やしねェ関係は、3人と1匹の日常は、コレを幸せと呼ばないわけねーじゃねェかってぇくらいシアワセだ。
 いままでひとっつも欲しいと思わなかった恋人の、その一種煩わしげな存在をお前に当てはめるのは、俺の行き過ぎた愛なのか?
 
 
 お前がもしそうだと、応と、そのかわいい小振りな頭を縦に振るなら―――
 
 
 俺はまた、・・・――――
 
 
 大切なモン、護れねェことになんだな。
 
 
 
 絆は強くて、そのぶん儚いのに。
 イヤというほど知ってたってェのに。おれぁまた―――
 
 
 
 
 
 滲んだ涙に歪んだ視界の底で、新八の独白は続く。
 
「・・・僕は、心底、アンタの幸せを願ってる。だから、どうか・・・どうか、僕を好きにならないで。僕を唯一の人にしないで・・・」
 
 ――もう、遅ェよ・・・
 
「僕は、どうしよもなく弱いから・・・きっと、いつか、銀さんの前から消えてしまう。だから、僕は、ただの助手として、銀さんの隣に居たい、ホント、それだけでいいんです・・・」
 
―――――ん・・・?なんか、それって・・・・・・?
 
 
 
「・・・あー、新ちゃん?」
 ブルーな気持ちをちょっと脇に置いといて、なんだ、この違和感?
 
 ゆるり、と視線を上げた新八は相変わらず涙でぐしゃぐしゃの(ある意味ではイイが)酷い顔をしている。
 
「なぁ・・・ソレってぇ、銀さんのこと、大事だと思ってる?」
 
 コクン、と新八がたいそう可愛い仕草で頷く。
 
「んでぇ、俺が大好きな新ちゃん脇に置いといて他の誰かと所帯持てばいいと思ってる?」
 
 再びコクン。
 
「ンでもって、お前はソレを、俺のすぐ傍で見てるワケ?」
 
 コクン。
 
「俺の恋人はァ、お妙みたいに強いヤツじゃなきゃダメだと思ってるワケだ?」
 
 ここで新八は、ングッ、と苦いものを噛んだような顔をした。
 ソレに、銀時は、とうとうプッツンした。
 
 
「ッッッ・・・ダァホかァァァァ―――――――ッッ!!!!」
 
 
 精一杯のシャウト。それはこの部屋の防音設備が始めて役に立ったときだった。
 
 
「あンなぁ、新八・・・ッ!おっまえ、どこの昼ドラのヒロインだ!!『ワタシは身を引きます。だからアンタはその人と幸せになって』ってかぁッ!!いまどきそんな謙虚なヤツいねェーよ!いたとしても猫かぶりだっつうの!・・・っ、だいたいそういう女に限ってなぁ、心にライオンも真っ青な女豹飼ってんだよ!」
 心底呆れた様子で銀時は新八に跨ったまま状態を起こし、天を仰いでいた。
(ホントにもう、コイツときたらッ・・・―――!!!)
 
「おまえ、ダメだダメだと思ってたけど、まさかここまでダメガネとは。銀さん脱帽よ?マジで」
 
 手で顔を覆い思いっきり溜息を吐いている銀時を見て、新八の元来の負けん気が振り起こされたらしい。
(そのむっとしたその表情がまた、潤んだ瞳とあいまって破壊力抜群だぜ、ってそうじゃねぇだろ!!!)
 そんな銀時のシャウトも露知らず。新八がおずおずと口を開いた。
 
「――・・・なんスか・・・こっちは、いたって本気で・・・」
「だから、それがダメガネなんだつぅの」
「ッ・・・んな!?なにがですかっ!!?・・・ッ、僕が、銀さんの幸せ願っちゃいけないって言うんですか?!」
 
 必死に言い募る新八の様子を銀時は指の間から静かに見守る。
 
「・・・だいたい、なんでも平気な顔してるアンタが悪い。なんでも平気な顔で受け流して、涙の一つも見せないで、自分のこと弱くないっておもってるでしょ?だから僕は、・・・僕達は、アンタが大事なモン失ってできる傷がひとつでも減るようにしてやることしか出来ないんだ・・・」
 
 自分でも、普段と違う恥ずかしいことを言っていると自覚しているのだろう。
 俯いて上気した顔を一層赤くしながら、一気にまくし立てている。
 だから新八は、銀時の、至極幸せそうに緩んだ顔に気付かなかった。
 
「いつもいつも心配しかさせてくれなくて――」
「・・・なー、新八ィ」
「なんッ・・・ちょ・・・銀さん、苦しい」
 
 呼ぶが早いか。再び腕の中に新八を捕らえる。
 先程より意識がはっきりしてる分抵抗が、マジ痛い・・・
 
「おい、コラ天パ!!・・・ホンット、いいかげんに・・・」
「・・・しあわせ」
「・・・え・・・?銀さ・・・」
「うれしい」
 
 満ち足りた呟きに、新八の抵抗はいつしか止んで。わき腹をしたたかに殴りつけていた拳は、いまや優しく銀時の背中に添えられている。じんわりと広がる熱に涙腺までバカになりそうで恐かった。
 
「・・・銀さん」
「すきだ」
「・・・ッ!!」
 腕の中の新八の体が強張ったのがわかる。そんな反応に苦笑しつつどうしたもんかと捕らえる腕に一層力がこもった。
 
「お前は消えない。俺が護ってやっから」
「でも、・・・」
「護られてばかりじゃイヤだ、とかって言うんじゃねーぞ?俺の幸せ奪う気か?」
「・・・え?」
「・・・俺は護れてうれしいの。ホントよ、新ちゃん・・・そりゃぁ、なくしちまうときのこと考えるとちびりそうになるけどよ・・・でもよ・・・それでもお前と抱き合ってられる時間には変えられねぇんだわ」
 なんだか無性に気恥ずかしくて、新八を抱きしめる振りをして肩に顔を埋めた。
「・・・なぁ、人間、どうせいつかは終わりが来んだよ。どうあがいたって、泣こうが喚こうが、何したってな。・・・だからってよ、そのオワリにビビって今のシアワセ素通りするなんてバカらしくねェか?俺は、今、お前と向き合っていてェのよ。好き好き言い合ってバカみてェに笑ってよ」
 
 それは終わりを恐れる心なんて嘲笑いたくなるような大きな力でもって、銀時の根底に変革をもたらした。
 かつて大切なものを手に入れて、奪われて、悲観することを覚えた俺の幼い心。
 
「それが一気にここ数年で払拭されちまった。なぁ、それって、すんげぇ事だと思わねェ?笑顔とシアワセで埋まっちまったでっけぇ穴によ、俺ァ確かに立ってんだよ。大層、見晴らしのいいそこに。―――・・・そこまで引き上げてくれたのは紛れもねぇ、・・・お前だ。新八」
 
 覗き込んだ瞳から零れる涙は、まだ頬を伝いつづけ、際限のないようだった。
 
「うぅぅ、・・・ひっ、く、うぅ・・・ぎんさ、・・・すきです・・・だいすきです、銀さん・・・」
 
 出来ればそんな苦しそうな顔で言わせたくなかった。
 でも、コノ部屋に連れ込んだ時点で泣かせる事は決まっていた。そのことに今更ながら後悔する。
 同時に、嫌われても仕方がないと思った。
 でも――
 
「俺も、大好き、新八」
 
 きっと手放そうと思う日はもう来ない。
 
 
 師を失って、仲間を失って、居場所を、己の存在を失いかけていたアノ日々に、唐突に終止符を打ったのはいかにも頼りなくて俺にしたら赤子のような手だった。
 その手の持ち主をいつしか大切に思う自分に初めは驚愕して、悪い夢だと思おうとした。
 だってそうだろ。喪失から逃げてやっと手にした日常なのに。
 手に入れたいと思ったヤツは他の誰よりも俺の日常の近くにいて、もう殆どソレと同化しているなんて。
 ウソだウソだと思ってみても、健全で図太い俺の本性は黙っていてはくれなくて。
 だから思った。決心したんだ。
 
 いつか、死が二人を分かつまで、この存在を胸に刻み続けようと。
 
 失って、もしかしたら失わせてしまっても、それで心が痛んでも、きっとそれもシアワセということになるだろう。
 愛するヒトがいた証になる。
 誰かのために泣くのなら、笑うのなら、断然、アイツでなきゃイヤだ。アイツであればいいと。
 
 
 だから俺はオマエの涙も嬉しい。
 俺の涙をそっと拭って、微笑むオマエのその全てが、俺のシアワセなんだ。
 
 
2009/8/23
 
 
巧く着地できていますでしょうか?
「幸せの定義なんか知ったこっちゃないけど、これだけは譲らん!」
的な、なんとも頼もしいマダオに進化したようです。。。


以下、これを書いていて思った銀/魂(銀さんの魂)についての考察です。
多分に三國個人の主観が披露されていますので、読んでも決してお気になさらず。



      <<<<!!!!! caution !!!!!>>>>



銀さんはお登勢さんに拾われた後、新八・神楽・定春と出会って生活を共にして初めて、
やっと、出会いと別れを繰り返し死んでいくありきたりな”人のさが”を享受できたんじゃないかと思います。

松陽先生といるときは時代が悪く、ただ人の命の儚さだけを心に植えつけられたんじゃないでしょうか。
(愛しいものも終には朽ちる。
じゃあ、俺が生きて感じることに意味は?
力を求める事が生きることか。子をなすことが生きることか。人に尽くすことが生きることか。
その前に、こうして考えることに意味は?)

いや、銀さんがこんなに哲学的だったかといえばそうじゃない気もしますが;、
茫然自失として己が何者かを図りかね、疑問をつねに胸に抱いて、
恐る恐る大事な仲間の傍で生きるしかなかった。だって仲間も自分も失うわけにはいかなかったから。
どんなに恐ろしくても、彼は頭がいいがゆえに他人に当たることも己を終わらせることも出来なかったから。

それが万事屋という家を得て、彼には信じられないことにただただ日常が愛しくなった。
完全に疑問は消えたわけじゃなけど、我侭になれた。
(失いたくない 失わせなくない これは俺のだ 誰にもやらない
欲しいってヤツは おとといきやがれ!)
笑顔を見てると幸せになれたし、心が凪いだりはしゃいだり、まぁウルサイ!
先生や昔馴染みに自慢もしたいだなんて。
そして不意に思う。これが生きるってコトかな?
でもそんなことは今はどうでもいい。
太陽を追いかけるのに忙しいから、嵐からヤツらを守ってやらなきゃいけないから。

だからこの疑問は死んでから松陽先生とじっくり考えることにしよう。



・・・なぁんて。どうなのかしら・・・
浅くて暗くてどうしようもないことを書き連ね、大変失礼しました。
どうにも本家の雲行きが怪しいので気分が引っ張られて書かないことには収まりませんでした。
万事屋ファミリーの安泰のために日々悶々としている三國レポート。

ここまで読んでくださった方、・・・どうか、

忘れてください。


拍手[10回]

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お待ちしてました

  • kentan
  • 2010/04/13(Tue)21:45:34
  • 編集
ド直球な話だったので、たまりませんでした。
拝読させていただいていた時、なぜか150話辺りのOP曲「輝いた」が頭に流れました。切ないのに安心感を感じるような。
消えた新八を、実は銀時が隠していた事が判明したところ、かなりドキリとさせられ、さすがの面白さだと思いました。
もう何度か再読させていただきます。
あと、できれば、拍手ボタンを設置していただけると嬉しいです。

あわばばば

  • 三國
  • 2010/04/14(Wed)00:12:22
  • 編集
kentan様、熱烈なお褒めの言葉ありがとうございます。
うれしすぎて爆死しそうです。

「輝/い/た」は私も好きです。
良くも悪くも心が打ち震える存在を手にして旅を続ける銀さんを思うと心から応援したくなります。
まぁ出来た妻と鎹たる娘がいれば安泰だとは思いますが。

拍手機能は、そうですね・・・
前から付けたいと思っていたので実行に移したいと思います。
しかし何分ネットに不慣れなもので;、なんとか勉強して近日中には。
それまでしばし時間をくださいませ。

無題

  • ウノーサノー
  • 2010/04/14(Wed)11:16:34
  • 編集
いきなり、拉致監禁な展開に、はわわわっDVとかですか!?
びびりましたが、丸くおさまって良かったです。
暴力抜きなら病んでるくらい新八ゾッコンLoveな坂田さんは好きなんで、今回のなりふり構わない暴走ぷりもドキドキしながらも面白かったです。
ただ、この後で魔王様と娘にどう説明するのかが気になるですけど(笑)

気になっちゃいましたか(笑)

  • 三國
  • 2010/04/14(Wed)17:57:24
  • 編集
あの二人を納得させるのには新八の協力が不可欠ですよね・・・
なんやかやで・・・はダメだな。うぅ~むむむ

気になってきたので宿題ということで(笑)

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