「俺とお前の八百万 2」
お待たせしました!
前記事「俺とお前の八百万 1」の続きでございます!
ないセンスで趣なんぞを模索したためにまたえらく時間がかかってしまいました。
銀時先生と一緒に少しでも青春を感じていただければ幸いです。
それでは続きからどうぞ。
俺とお前の八百万 2
2010/05/31
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『君と手をつなげば未来だって恐くはない』
パチ恵はほんとにいい女になりそうですね。
先生は存分にヤキモキすればいいとおもいます(笑)
ここまでおつきあいいただいた皆様、本当にありがとうございました!
ほとんど更新できていない状況にも関わらず回るカウンターを見るたびに
申し訳なさとやる気に襲われてうぉおおぉぁっと身悶えておりました。
苦労して完結させたくせにすでに続編を書きたくなっています...うぅぅ
原作銀新もちまちまアップできればいいな・・・
前記事「俺とお前の八百万 1」の続きでございます!
ないセンスで趣なんぞを模索したためにまたえらく時間がかかってしまいました。
銀時先生と一緒に少しでも青春を感じていただければ幸いです。
それでは続きからどうぞ。
俺とお前の八百万 2
憎らしい程の晴天に大きく枝を広げた桜並木。その下でざわめく学生の群れは皆思い思いに学生時代最後の時を過ごしている。奇想天外、群雄割拠の銀魂高校も本日目出度く卒業式を迎えていた。
それを少し離れた木陰で見つめるのは3年Z組担任、坂田銀時。吐き出す紫煙は時折強く吹く風によって生徒たちには届かなかった。
遠くに聞こえる喧騒はやはりというべきか、3Zを中心に繰り広げられている。神楽と沖田の最終決戦。桂とエリザベスのコント・ザ・ファイナル。屁怒絽作、異界の匂いぷんぷんのフラワーアーチ。それを遠巻きに卒業生と在校生が入り混じって囲んでいるが、その顔には一様に笑顔が浮かんでいた。
「先生、こんなところにいたんですか」
「んあ?」
「さっちゃんさんが探してましたよ」
「だからだろうが。卒業式でもお構いなしにメンドクセェんだもんよ……なに?」
「あ、いや…意外とスーツも様になるなぁと思って…」
「いや、ジャケット着ただけだしいつもとそう変わんねェよ?つーか意外ってなによ」
「ぱっつぁん見惚れれすぎアル」
「うわっ!神楽ちゃんッ!そ、そんなんじゃないよ!今のうちに見ておかないともったいない気がして…」
「そうアルなァ~。銀ちゃんなんかすぐタルッタルンのヨレッヨレになるアル」
「俺ァしわくちゃのミカンかよ」
「「あぁ…」」
「納得すんじゃねェ!!」
くすくすと笑いをこらえる志村の空いた右手を握ってやった。途端にビクリと硬直する。あからさますぎるだろ。こっちまで緊張するからやめてほしい。
「…春アルナァ。付き合い切れねェアル」
「あ、神楽ちゃ…っ」
ニヤニヤ笑いを見せつけて神楽は再び喧騒の中へと走った。あっという間に校庭の真ん中に躍り出て叫んだ。
「定春―――っ!!!」
「わんわんっ!!」
神楽は大親友である定春と、大きくうねる桜吹雪を引き連れて、一瞬一瞬を体で満喫しつくそうとしているようだった。
「…あいつでも空気読めるんだな」
「読ませるようなことした張本人が何言ってるんですか…」
「だったら離して御覧なさいな。ホレ」
パーにした手に慌てて指を食い込ませる志村に内心で愛を叫ぶ。
「…意地が悪いです、先生」
泣きそうな顔で上目使いとか、堪りません。
「悪ィ悪ィ。離さないでいてくれると思ったからよ」
泣かせたお詫びにクサいセリフをプレゼント。嘘。正真正銘の本心です。本気の自分が痛くて気持ちいい。
ほっと息を吐いて俺に預けられた体重。頬の熱がまんま俺の肌を焼く。
耳の奥で速さを増した鼓動は心地よく俺の冷えた体温を高めてくれた。
これを日常から取り上げられるなんて、俺はやっとこ真人間になったのが音を立てて崩れそうで怖かった訳だが、志村はそうはさせなかった。
こうしてしみじみと思い出に浸ることができるのはやはりコイツのおかげである。
銀時は手を固く握りなおすとすでに何度思い返したかしれない昨夜の出来事に再び思いを馳せた。
*
「通勤ラッシュなんて初めてなんじゃねェの?」
「今まで徒歩でしたもんね」
「大丈夫なのかよ」
「なんとか」
「サークルには入るのか?」
「そうですねぇ、面白そうなのあれば」
すっかり板についた所作で酒を注ぐ志村は嫌な顔一つせずくそまじめに俺の質問に答えていった。翌日に卒業式を控えている担任と生徒が何をしているのかと思われるかもしれないが、志村のいうところのけじめとして、最後の出勤に付き合ってやっていた。
チープな内装で寂れてはいるが安くてうまい酒が飲めるこのスナックは不本意ながらすっかり俺の行きつけになっていた。志村を独り占めする俺は来るたびに常連連中から嫌な目で見られたがそんなことは気にしたこともない。しかし、今回ばかりは質問攻めにしている自覚はあった。案の定、周囲の視線に憐れみめいたものが紛れている気がして気分が悪い。まるで娘を嫁に出すのを渋る父親のようなのだろう。したり顔で頷き合う親父どもの慎重に整えられた毛髪を余すところなく毟ってやりたい。しかし、近頃では神楽を避け続けているため志村と話す機会はめっきり減っていた。こんな機会でもなければこいつと向き合うこともできないでいたのだ。
「先生。あんまり飲みすぎないでくださいよ。式の最中に居眠りでもしたらPTA敵に回しますよ」
「俺はそんな小せェこと気にしてねェんだよ。男は自分を曲げたら終わりだからな」
「そっか。先生は初めから終わってますもんね」
「ちょっと、仮にも俺お客様だからね?暴言なんてサービス頼んだ覚えねェけど」
「お望みならもっと差し上げますが?」
「心の底からいらねェよ!!」
夜のしっとりとした雰囲気をまといながら控えめに笑う志村。
最初にこれを目にした時の衝撃といったらなかった。
(女って恐ェ…ッ!!)
まるで詐欺にでもあったような気がした。しかし同時に苛立たしくもあり。
(こいつはこれからここで培った手練手管をどこの馬の骨とも知れない男どもに披露するんだろうな…)
思えばここからすでに俺はコイツの先生としての立場から降りていたのだと思う。
いや、それより前から、地味なくせに時折メガネの奥に強い光を宿らせるコイツを見た時から、俺がコイツ相手に手も足も出なくなる運命は決まっていたんだろう。
「あ、そういえば先生に渡したいものがあるんですよ」
「…へ?」
己の思考に没頭していた俺は間抜けな返事を返していた。
それを酔ったせいだと思ったのか苦笑いだけ浮かべた志村は俺を裏にある休憩室へと引っ張っていった。
「これです」
そういって差し出されたものはどこかで見たことのある真っ黄色の袋。
「…これって、カーテンの上のシャーってなるヤツ?」
「違いますよ!とにかく見てみてください」
若干のむず痒さとともに袋から箱を取り出す。手探りで引っ張り出した弁当箱ほどの大きさの箱を見た俺はむず痒さを忘れた。
「何?コレ?」
『チリリ―――ン』
俺の質問に答えるように箱から涼しげな音が聞こえた。
「見ての通りのドアチャイムです。取り付けは簡単、ドライバーも釘も一切いりません」
「いやいやいや、それは見りゃ分かんだよ。俺が言いたいのはつまり俺にこれをどうしろってゆうことで。なに、首から下げて歩けばいいの?俺は牛か!」
「いやいや、違いますよ。それなら始めから首輪買ってます。そうじゃなくて先生が使ってる準備室にどうかなって」
「あ?俺の部屋にゃロクに人なんか来ねェし、頼みもしねェのにしょっちゅう来てたオメェらが卒業しちまえばそんなん必要ねェよ」
「いいんです。先生が出入りするときに音が聞こえるくらいでちょうどいいんです」
「?」
「いいですか?これは私が先生にプレゼントしました。言わば私の分身なんです。それで、私のあの部屋での役目といえばそれは一つしかありません」
「…つまりこれは俺の監視役ってぇこと?」
「監視なんて失礼な。音が鳴るたびに親切な忠告をしてくれるんです。我ながらいいアイディアだなって。卒業生の頼みなんですから聞いてくれますよね?」
めいっぱい自慢げな顔をしている志村。それを横目に深いため息とともに肩を落とすと手の中の箱がチリーンとなった。
「――授業終わりにさぁお菓子食べるぞ!っと勢い込んで扉を開ける!するとドアベルがチリーン♪先生は『ハッ!!』っと…――」
「――ならねェから」
口をはさむとムッとにらんできた。
「…なりますよ」
「なりません」
「なります!」
「なりませ~~ん」
怒りで釣り上げられた眉を一転、八の字に下げると微かな笑みを浮かべた。
「…だって先生、止められないと際限なく食べちゃうし、」
「うん」
「部屋も散らかし放題だし…」
「そうね…だから、お前が直接その親切な忠告?してくれりゃあいいんじゃねェの?こんな回りくどいことしちゃってまぁ。卒業したらメンドクサいってんなら俺の事なんて放っておけよ」
顔を見る勇気なんてなかった。それでも俺は口に閉じる暇を与えず思いを強引に押し出した。
「誰も強制なんかしてねェし、お前の義務でもない。むしろがっつり勉強して、ダチとつるんで遊んでヘマやらかすのがお前らの義務だ。そこに高校の担任の世話なんか入れろなんて誰もいわねェ。…ただな、お前が捨てるか拾うかしてくれねェと俺は身動き取れそうにねェんだわ。我ながら情けねェ話だと思うが、お前はどうしたい?こんな、俺みてぇなダメ男、今切っておかねェと後悔するよマジで。先生結構しつこいから。ギトギトの粘着質だから」
なんたって慎重を重ねて築きあげた俺たちの関係へ初めて投じる一投だ。
軽快なやり取りと笑顔の裏に隠されたどうしようもなく熱いもの達。決してないがしろになんかできなくて大事にしまってきた。もしかしたらそれもいいわけだったのかもしれない。逃げを打ってきたように見えていたかもしれない。現に身近な人間に不安を抱かせるほど平静を装ってきたから。だがしかしだ、今言わなくていつゆうのだってもんだろ。
酷く鈍感な上に自分の都合のいいように解釈しないようにブレーキをかける慎重派のコイツでも、俺の意図することが分かったらしい。チークとは違う、魅力的な桃色に頬が染まる。
底抜けに優しいから、俺が「身動き取れない」といえば何かしらの答えを示してくれる。確信めいた俺の策略は正解だったらしい。硬く噛んだ唇の奥では俺への、俺のためだけの言葉が用意されている気配がする。それが俺の熱意への肯定でも否定でも甘んじて受け入れるために俺は腹筋に気合を込めた。
「…なんで…」
「…ん?」
「なんで、…ここで、私の準備できる答えなんて……答えなんかじゃ……」
「…志村?」
俯いたままふるふる震えだした志村の様子が尋常じゃないことを感じて声をかけたが、聞こえていないようだった。その代り、キッと上がった視線の強さのまま志村は叫んだ。
「駄目に決まってんじゃないですか!!先生のバカぁッ!!!なんで二択なんですか!なんで『捨てる』か『拾う』かしかないんです!?」
顔を真っ赤にしてうっすらと瞳に涙をためた志村は苦しそうに顔を歪めた。
「先生とずっと一緒にいたい…それはホントなんです。お願い先生、私に、時間を下さい。先生と釣り合えるぐらい素敵な大人になるまで、私が先生の隣に立っててもいいと思えるようになるまで、時間が欲しいんです…おねが、い…せ、んせ、そうすればきっと…」
限界が来た。嗚咽を必死に堪える志村にも、コイツを抱きしめたい俺の両腕にも。
腰へ回した腕に力を込めると志村の腕は俺の首に回った。いつもより呼吸を近くに感じる。耳にかかる吐息が熱い。
「…大好き、好きです先生」
「…うん、俺も。…だれにも渡したくねぇんだ。そのためだったら…」
眩暈がするほど熱い視線同士を絡める。
「そのためだったら、いくらでも待つ。お前が俺の腕の中に戻ってくんの待つよ」
「せんせ…」
「だから俺を信じるといってくれ。俺にお前の未来、くれよ」
行き先を迷った俺の唇が、目尻に触れる直前だった。俺の耳は辛うじてその言葉を拾った。
「…しんじてますよ…」
*
「なぁ志村、チュウしていい?」
「はぁッ!!?」
「なぁなぁいいだろ一回くらいさぁ~。夕べ一晩考えたんだけどよ、どう考えても妥当な要求だと思うのよ。むしろそんぐらいしてもらわないと俺が可哀相?みたいな?」
「基準がさっぱり分かりません!いえ、分かりたくないので説明は拒否します」
「えぇ~ケチ。メガネ。おさげ。ストレートをわざわざウェーブにするとか、髪の神様に対する冒涜だからね?俺ってばケンカ売られてる?」
「この前は髪下すなって言ってたじゃないですか。…あと、その、キ、キスはですね、大人になった私へのご褒美にしたいんです……駄目ですか…?」
(全然ダメではないでっす!むしろオールグリーンの完封勝利です!!)
…なんてゆう、心の叫びは苦労して飲み込んだ。どうでもいいからその顔をほかの野郎の前で絶対に披露してほしくないのですが。
「…分ぁったよ。そん代わりなんかあったら即俺に相談しろよ。変な遠慮とかしたら問答無用でヤるからな」
「わ、分かりました。ありがとうございます」
ここで礼を言ってしまうのが志村の悪い癖だ。
「いいってことよ」
いつの日か、自分の強さにコイツが気づいた時に、自信を抱いて喜びに震えるそのときに、いの一番に俺を思い出してくれればいいな、なんて。そう遠くない未来、純白の笑顔で駆け寄ってくる姿と絡ませた指先を同じくらい、誇らしく思った。
遠くに聞こえる喧騒と、肌をなぞる風、柔らかな陽光もすべて愛しく感じる。そう感じるように俺を変えてくれた俺だけの魔法が桜色の笑顔を浮かべた。
2010/05/31
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『君と手をつなげば未来だって恐くはない』
パチ恵はほんとにいい女になりそうですね。
先生は存分にヤキモキすればいいとおもいます(笑)
ここまでおつきあいいただいた皆様、本当にありがとうございました!
ほとんど更新できていない状況にも関わらず回るカウンターを見るたびに
申し訳なさとやる気に襲われてうぉおおぉぁっと身悶えておりました。
苦労して完結させたくせにすでに続編を書きたくなっています...うぅぅ
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