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「大樹の陰」


神楽ちゃんはっぴーばーすでー!!!

と、いうことで、以前に予告しましたかぐ誕小説がなんとか形になりました。

強くてカッコいい神楽ちゃんを応援しています。
大樹の陰
 
 
 
   私にコワいものはない
   
   イヤなものと、キラいなものはあるけど、ソレだけは絶対にない
 
   ソレが私の誇りであり
 
   ソレが私だ
 
 
 *
 
「神楽ちゃん、どうしたの?眠いの?」
 
隣に座る新八にズルズルと寄りかかると、顔を覗き込もうとしてきた。
 
「・・・なんでもないアル」
「そう?」
 
顔を俯かせて返事をするとまだ何か言いたそうだが、他に呼ばれて、新八の意識はそっちにもって行かれてしまう。それでも、私の傍を離れることはしなかった。
 
 
私の誕生会は、魔物が2匹はびこる階下のスナックで行われた。
 
銀時に、新八、定春。お登勢に、キャサリン、たま。それにマダオの長谷川と、どこから聞きつけたのかヅラもちゃっかり参加していた。
 
貸切ではないから、入れ変わり立ち変わり、ここの常連と思しき面々がなれなれしくおめでとうを寄越してくる。
頭を撫でてこようとしたヤツは回し蹴りで壁と仲良くさせてやったが、
まぁ、悪い気はしないから、歌舞伎町の女王らしく、鷹揚にあしらってやった。
 
でも、いつもなら人を足蹴にするとすっ飛んできて私を叱る新八も、ただニコニコと見守るばかりで。
その横ではお登勢が物知り顔で煙草をくゆらす。
それを見て、胸の辺りがぞわぞわと動いた気がしたけど、悪い気はしなかった。
 
 
そしてもう、宴もたけなわの頃。
銀時と新八に献上させた5本のごはんですよの空瓶をテーブルの上に並べた私はご機嫌で、
でも、それを悟られたくなくて、新八に甘えるように擦り寄ったのだ。
別に、眠いわけではない。
 
寄りかかって見ればコイツも、ひょろくはあるがれっきとしたオスで、一回り小さな私がどれだけ頭に体重を乗せようともビクともしなかった。それになんだか泣きたくなった。
 
「なに、神楽ちゃん?やっぱり眠いんでしょ?」
 
独特の、柔らかくて甘ったるくて、眠くなる声がする。
でも違う、眠いんじゃなくて。
 
「・・・新八」
「なぁに?」
「新八の・・・チビ・・・」
「・・・・・・はぁ!?いきなりナニ?っていうか、神楽ちゃんに言われたくない・・・」
「うっさいヨ。ホントのことアル。悔しかったら早く銀ちゃんくらいおおきくなるアル」
 
なんだよ自分は誕生日だからってとか、メガネの次はチビかよなんて、文句を言う声はウルサいけど。
ウルサいけど、どこか心地良い。
心地好く思ってしまう自分が酷く慣れない。
 
 
そうだよ、早く大きくなってしまえばいい。
私が負けたと思うくらい。ふとした瞬間の強さや、存在の近さに驚く事が無くなるくらい。
 
どうせなら、剣を捨ててくれてもいい。
私や銀ちゃんが帰る家で、ただ待っていてくれたらどんなにいいか。
でも、それは叶わぬ夢だということは、新八をみていれば分かる。分かってしまう。
銀時も、何度このことを言いかけて止めたんだろうか。
危険を抱えやすい自分の傍で、思いや痛みや涙を共に感じたいと願うコイツに、一体何度。
 
 
頼むから、無理してくれるな。離れてくれるな。置いて行ってくれるな
頼むから、自分より先に、死ぬんじゃない
 
 
手前勝手なのは性分で、それを通すための強さを持った私たちだけど。
コイツのためには弱ってしまって、知っている人には決して見せられないし、知られちゃいけない。
 
きっと、銀ちゃんはヅラに知られてる。私はパピーに知られてるかもしれない。
でも、それでも。
 
  オマエを弱点なんかにはしない
  侍になって、神威を驚かせて、パピーに悲しい顔をさせない
  まだまだチビな私だけど、ヤル事は案外多い
  まだまだチビな私だけど、新八がいれば頑張れる
  一緒に強くなるって言ってくれた、あの日があるから
  わたしは、強くならなくちゃいけない
 
そうしてもう何度目か知れない決意をする。
 
 
と、銀時のいるカウンターの辺りから激しい音が聞こえた。
 
「なんだ銀時、なさけないぞ。お登勢殿。おきゃわり」
「あんたもだいぶ酔ってんじゃないかい。それよりソコに転がってんの、なんとかしな」
「うぅあ゛あ゛ぁ゛~~~、もう飲めねェー。新八ィ~、みず~」
 
どうやら銀時が椅子から転げ落ちたらしい。
他の連中もみんなぐでんぐでんで、誰も介抱しようともしない。
 
「あぁあぁ!っとに、銀さんはどうしようもないなぁ。あんだけ飲みすぎるなっつたのに!」
 
そういいながらも新八は私に謝ることを忘れずソファを後にした。
新八の座っていた尻の部分に手を当てると温かくて、またなんだか泣きたくなった。
 
「おやおや。こっちも大分おねむみたいだねェ」
 
急に近くで声がして、顔を上げるとお登勢だった。
意味を理解して、イヤな顔をする。
 
「そんな顔しても無駄さね。銀時が一人で飲んでる時みたいな、情けない顔になってるよ」
 
あぁ、だったらそれは大変だ。
 
「・・・ちょろっと飲ませただけだったんだが、こりゃまた随分効いちまったみたいだ。悪い事は言わないよ。早いとこ寝床に入んな。いまなら新八に世話してもらえるよ」
「ダメガネの世話にはなんてならないアル。それじゃぁな、ババァ。いい夢見ろヨ」
「あぁ、あんたもね」
 
私の帰る気配を察した新八が、急いでお登勢に暇を告げる。
 
「それじゃぁ、僕ら一旦失礼します。後で片付け手伝いに来ますから」
「あぁ、そんなのいいよ」
「でも、」
「それよりそいつ等、ちゃんと寝かしつけておやり」
 
顎でしゃくられてまたムッとしたが、新八が苦笑交じりにはい、といい返事をしたから不満はどこかへ行ってしまう。
(そうアル。酔ってるし、誕生日だし、酔っ払いと一緒にいい思いをすればいいアル)
介抱されてる白髪と、どこまでも全く同じようなことを思いついた神楽はパァッと顔を輝かせた。
それに気付いたお登勢はニヤリとした笑みをこちらに寄越した。
 
 
そんなやり取りは露知らず。
急に上機嫌になって銀時の肩を反対側から支えた神楽に新八は笑顔でありがとうと言った。
 
 
ウキウキ ウキウキ
 
 
そんな音が聞こえそうな足取りの神楽と、ドジっこダメガネ。
今日は3人が出会ってから初めての神楽の誕生日。
それと同時に、新八を誰よりも大切に思いながら素直になれない、でも新八の人生を盛大に引っ掻き回して振り回す、前代未聞のツンデレが二人になった記念日だということは、誰にも知られていない。

2009/11/3
素直じゃないのは仕様です。
甘えるには酔っ払うか、風邪をひくしかない。
新八にとっちゃいい迷惑。

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