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「俺とお前の八百万 1」

どうも久々でございます。
有言実行からはほど遠い三國が戻ってまいりました...
3月0記事って…ッ!!銀新は確かに日々の活力なのにィ!うわーん

また、震災に会われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
私の住む地域では幸い大きな被害もなく、ぎこちなく普段の生活を
歩まんとしている状況です。日々の節電が板についてきました。
小さなことからこつこつと。 がんばろうぜ日本!!!

気を取り直して、ちょこちょこと続けてまいりました新八にょたシリーズ
完結編となる「俺とお前の八百万」をお送りしたいと思います。
何それ?な方に説明させていただきますと、3Zの世界観で新ちゃんが
女の子ってゆう少女マンガみたいな甘々青春白書です。
あ、ちなみに二人はくっついておりません。

前シリーズはこちら↓になります。

〇「俺とお前の八卦」     前編 / 後編
〇「俺とお前の十八番」    /  / 









   俺とお前の八百万
 
 
 
 かちりとなるお猪口と徳利は束の間その肩を差し出しあって離れていった。
「今日で最後ですね」
「…そうですね」
 ふわりと笑うこの子の頬は屈託なく光をはじく。
 卒業式を次の日に控えた夜のいつもと変わらない風景だった。
 
 
 *
 
 
「銀ちゃ~ん入るアルよ~」
「ノックぐらいしろってぇの」
「そんなもん私と銀ちゃんの間には必要ないアル」
「誰がどうゆう間柄とか関係ぇねェよ。いいか?校長だろうと将軍だろうと中二の息子を持つ母親だろうと必要なことなんだよ」
「なんですかその微妙な限定は。なにかトラウマでもあるんですか」
「違いますぅ~。一般常識を説いてやってるだけですぅ~」
「そうですね。先生とは仲良くないみたいですしね。神楽ちゃんならまだ間に合うかもしれませんし」
「どういう意味だコラ。あ~そんなこと言われたら先生片付ける気なくなっちゃったな~。さっきまではバリバリやる気だったのによ~」
「やる気とは絶縁してるって前に言ってませんでしたっけ?いいから大掃除しちゃいましょ?せっかく年度末なんですから捨てれるものは捨てて心機一転、新学期を迎えるチャンスなんですから」
 こんな機会でもないと自分じゃやらないでしょ、なんて小言をこぼしつつ志村は問答無用で掃除の体勢に入る。床にまで積まれた本や書類の山をよけつつ窓にたどりつき一気に開け放す。途端にここちよくぬくだまった風に乗って隠れていた綿ぼこりが荒野の枯草よろしく転がり出た。
 地味に堅実に受験を終えた志村は、残りの時間を有意義に使うと俺に宣言し、その第一弾として俺の隠れ家の掃除を買って出た。頼んでもいないのに。
 志村が家から持ってきたという使い捨てのマスクに揃って顔を覆われた3人はしばらく黙々を手を動かした。いる書類といらない書類。まだ読む雑誌と消滅という運命を言い渡された雑誌。それだけ分ければ銀時の部屋はあっという間に片付いてしまうのだ。途中、二人に気づかれないようにピンク色の雑誌を回収したり、糖分を隠しなおしたりして大変に疲労した。やはり慣れないことはするべきではないのだ。
 掃出したゴミをゴミ箱に捨てた志村は一通り部屋を見渡した。すでに飽きて漫画を読みだした神楽と、きれいな部屋で居心地悪そうにしている銀時にもついでに視線を向けるとマスクを外した。その下には想像した通りの満足げな笑みがあった。
「だいぶ片付きましたね。手伝ってくれてありがとう神楽ちゃん」
「工場長の出張料は高いアル。報酬は分かってるアルな」
「はいはい工場長。じゃあゴミ出して来たらコーヒー入れますね」
 ドアの外に消えた気配が遠ざかっていく。足音が聞こえなくなったところで神楽が口を開いた。
「ねぇ銀ちゃん」
 妙に改まった気配に銀時は嫌な予感がしたので、手元の誌面に集中することにした。そんな反応は予想していたのか無視したことへの鉄拳は飛んでこなかった。俺的はその方が何倍もよかったか分からない。
「パチ恵のことどうするつもりアルカ?」
 心臓がぐっと縮まった気がした。背中に伝う嫌な汗を無視して平静を引きよせる。
「どうするもこうするも、あいつがやりたいって言い出したんだし別に何も奢ったり――」
「そうじゃねェだろ天パァが。これ以上白けたら縮れ毛って呼ぶぞコラ」
「いやマジで止めてください神楽さん」
 本職も真っ青になるであろう凄みを見せた教え子にそれでも冷めた視線を送った。
「どうするもこうするも、何もしねぇよ?校歌歌って、ちょっと泣いて、贈る言葉かけて、そんで送り出す。スーツ脱いでタバコ吸ってソファで寝る。天気イイらしいしお前らが騒がない限りいい卒式になるだろうぜ」
「天気なんか関係ないネ。ヤツとは決着つけるし、定春とは最後のランデブーアル」
「おまえね…まぁいいけど」
「パチ恵は泣くアル」
 その言葉に銀時の瞳がわずかに揺れる。しかし歯をかみしめる神楽は想像の中の八重に心を痛めるのにいっぱいいっぱいだった。
「ヘタな校歌歌ながら泣いて、別れるのがつらくて泣く子を見て泣いて、それでもいつもと変わらないみんなが嬉しくて泣いて…銀ちゃんのせいでもなくアル。絶対にナ。ねぇ、銀ちゃんはパチ恵をどうすアルカ?」
 はたから見たら喜ばしい旅立ちも、そこにはどうしようもない離縁が付きまとう。それに悲しみを添えるのか、喜ばしいものに変えるのか。このチャイナ娘はそれをなにより案じていた。地味でおとなしい志村八重と異色のタッグを組んで3年。ヘタな姉妹より硬い信頼でつながっているこいつらは実によく互いを思いやっている。一見すれば手のかかる神楽を見守る志村という構図であるが、神楽も陰で志村を守ってきた。志村に気のありそうな男子には度胸試しと称して勝負を挑んでいたし、夜のバイトに関してはボディーガードを買って出たし、一人になるのを頑として阻止してきた。その神楽が、志村より付き合いの長い俺にまでその照準を合わせるのは仕方のないことなのだろう。
 
「返答に寄っちゃ銀ちゃんでも容赦しないネ」
 
 つまりはこうゆうことだ。
 破壊神だろうがこいつはむやみに暴力をふるったりしないから。硬く握られたこぶしは今は震えるにまかせ体の両脇に下されている。
 二人の間には依然としてあけられたままの窓から春の匂いのする風が荒々しく吹き込んだ。それは卒業を間近にして態度の変わらない銀時を咎めて、答えを急かす様だった。一度閉じた瞼をゆっくりと開いた銀時が唇を動かしかけたその時だった。
「おまたせしましたー。神楽ちゃん購買で酢昆布買ってきたよ」
 突如としていきおいよく開け放たれたドアの音に二人はそろって肩を揺らしたが、そこはそれ。瞬時に平静を取り戻す。
「おぉー待ちわびたアル。あと少し遅れたら銀ちゃんのエロ本燃やしてやるところだったネ」
「とばっちり以外の何物でもねェな。いや、そんなものないけどね?」
「先生、動揺しすぎです。はい、神楽ちゃん」
「うほーーい」
 さっそく酢昆布の包装と格闘している神楽をしり目にじっと志村を見てしまった。
「なんですか?コーヒーなら今入れますよ?」
「…おー」
 銀時にしては珍しくいまだ動揺を続ける心臓に困惑する。でも今はまだその小さな背を、そっと眺めていたかった。

                                                                                           2011/04/02

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例によって長くなりそうなので分けました。
この二人は大事に見守っていきたいと思います。

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