忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「くらげとみる夢」

久々に浮上して参りました。
ひとまず月3ペースですかね。ふぃ~;
自分の遅筆が本気で恨めしい今日この頃。
いや、昔っからこんなんだったじゃん自分。ただ進歩してないだけです分かってます。
…あぁ~ん(泣)

気を取り直して続きは銀→(←)新です。
若干救いがない感じなのでそうゆうのが苦手な方は回れ右でお願いします!



 
 
 
 ささやかならぬ俺の願いを聞き入れたまえ
 
 忘れぬように白亜の紙にじっとりと記すがよい
 
 重い筆先でざらっとなぞれば 涙の通った道に似ていた
 
 
 
   くらげとみる
 
 
「鬼さんこっちら、手のなる方へー」
 
 路地裏からガキの歓声が聞こえる。隣を歩く新八を見下ろせばどこか満足そうに笑っていた。
「思い出し笑いとか寒いよぱっつぁん」
 上げられた視線は俺を非難していた。
「違いますよ。元気な声を聴くと嬉しくなるじゃないですか」
「ああ、ウチの馬鹿娘がいたら悲鳴が混ざるモンな」
「ちょっと。そうゆうこといってんじゃないです。銀さんも一回あの中に混ざって遊んできたらどうです」
「なんで俺が」
「童心を理解するには一緒に遊ぶのが一番なんですって。実際、親が長い時間一緒に遊んであげた子供はぐれ難いそうですよ」
「アホらしい」
 笑い声をあげた子供が俺たちの脇を通り抜けた。鼻水がキラッと光って見えた。
「神楽ちゃん、寒くしてないかな。帽子嫌がって置いていっちゃったんですよ」
「いらねェってゆうならいいんだろ」
「今日はお鍋にしようかな」
 コイツの耳にはもう俺の言葉は届かなかった。
 
 
  *
 
 
「おやすみヨー」
「おやすみ神楽ちゃん。あ、待って。今湯たんぽ準備するから」
「早くしろヨメガネ」
「はいはい」
 そういって台所に引っ込んだ新八を見送って、神楽は銀時に向き直った。
「そこのモジャモジャ」
「…」
「天パ」
「…」
「新種のたわし」
「だぁもう!うっせぇなぁ!なんだよ新種のたわしって!」
「うっせぇのは銀ちゃんアル。さっきから構ってオーラ駄々漏れネ。子供でももうちょっと上手くヤルアル」
「知るかよ。濡れ衣甚だしいこと言ってんじゃねェクソガキ」
「濡れネズミは銀ちゃんアル。魚逃して泣く男なんて見れたもんじゃないネ」
「俺は泣きませ~ん。泣いたとこみたことねェだろが」
「だから見たくねェ言ってるアル。あのバカはバカみたいに鈍感で救いようもないぐらいに敏感アル。銀ちゃんも分かってんだロ」
「…言ってること分かんねぇし、めちゃくちゃよ神楽ちゃん。アホなこと言ってねェでガキは早く寝ろ」
「言われなくても寝るアル。とにかく、寒くなってからの銀ちゃんはなんか変ネ。その変がメガネにも伝染したって言ってるアル。銀ちゃんが落とし前つけるのが筋ってもんネ」
 明日までにどうにかしないと沈めるかんな。そう言い残して新八から湯たんぽを強奪し、さっさと押し入れに入った。あとに残された新八は怪訝な顔で居間に戻ってくる。
「なんか神楽ちゃん、変な顔してたんですけど」
「あ?そんなんいつもだろ」
 俺と視線が合うと新八はやわく笑った。俺はそれを見て昼間の喧騒を思い出した。
「それじゃ僕もう帰りますね」
「なに、泊まってかないの」
「えぇ」
「ふぅん…じゃあ俺にも湯たんぽ」
「駄目ですって。神楽ちゃんは子供なんですから寒い思いさせちゃ可哀相でしょう」
「俺も寒いんだよ」
「お湯沸かすのもタダじゃないんです。我慢してください」
 いつかもしたやりとりを繰り返せばあきれた顔でため息ひとつ。
「わかりました。寝酒でも飲みます?それともイチゴ牛乳温めますか?」
 いつになく魅力的な提案をしてくれるじゃないかと思ったがそれはまた今度にしていただくことにする。
「…一緒に寝れば温けぇんじゃねぇの?」
「…え?」
「うんそうだ。いい考えじゃねェ?さすが俺冴えまくってんな」
「え、あの、銀さ…」
「つぅわけで着替えろ。寝るぞ」
「…いやいやいや。ありえないです。いくらなんでもそれはないですよ銀さん。神楽ちゃんのトラウマになっちゃいますって」
「なんだよ。金かかんねェ方法って言ったらこれしかないだろうが。古今東西、先人たちは寒い夜は身を寄せ合って眠ってたんだよ。それにいつも同じ部屋で寝てんだ。布団が一組か二組の違いだろ?そう変わんねぇって」
「…銀さん寝相悪いし」
「あ、俺となりに人寝てると大人しいらしいよ」
「…そうですか…」
「そうなんですよ。はい、とゆーわけで俺たちの間に何の障害もなくなったわけだ。ションベン行ってくるから着替えてろよ。いいな?」
 そういって押し付けた寝巻を挑戦的な態度で受け取った新八を見下ろしてとどめの一言を落としてやる。
「決まりだな」
 一度腹を括った新八というやつはかなり厄介だ。手に負えないほどの頑固者へと変貌を遂げるわけだが、それはしばしば本人にとっても後悔の種となるのを銀時はよく心得ていた。
(ばぁ~か…)
 ひそかに毒づいてみても今度ばかりは綺麗にこの身にも降りかかってくるのだからホント勘弁してほしい。
 
 早速後悔している背中はかたくなで。心地よい体温を感じる前から拒絶が肌に突き刺さる。腹へと手を回して引き寄せれば、これまで知っている何物とも違うようでしかし昔から知っているような不思議な、ともすれば不安な気持ちにさえ侵された。硬くてひどく異質で、途方もなく愛しい。
「銀さん、あっついです」
「そのうち慣れる」
「大人しくそっち向いて寝れないんですか」
「問題ない」
「大ありです」
「…泣いてんのか?」
「泣いてません」
「…悪かったな」
「そう思うなら行動に移せ。離してください」
「じゃなくて」
「…さっきからなに言ってんですかアンタ」
「…うん…」
 いつもならいやに響く安物でもらい物の時計の音もこの晩限りは心音の一部になるしかなかった。
「お前もこっち向いて寝ろよ」
「なんで」
「お前の顔が見たい」
 そういうとしばしの間をおいて身じろぎしながら新八はぼそりと口を開いた。
「…僕は見えないんで嫌です」
「ホイ、眼鏡」
「…そうゆう心遣いはいらないんですってホント最低だな」
「そうだな」
 肩を引き倒して眼鏡をつける間新八はじっとしていた。
「…やっぱり泣いてんじゃん」
「そう見えますか」
「あぁ」
「アンタの目が悪いんですよ」
「そうか」
 唇を寄せたほほはやっぱりしょっぱくて、のぼせた体から吐かれる息は夢見たくらいに熱い。
「…銀さん…銀さん、僕ね、」
 ネオンを吸って暗闇に光るでっかい目ん玉から涙が零れ落ちるのを目の当たりにした。
(…これはもうダメだ)
 縋られた手を取って肘まで辿り、その場所をぐっとおしてやる。
「痛ッ…」
 あの日以来見てはいなかったそれは今も青たんか何かとしてコイツの体に存在しているらしかった。
「新八、お前よぉ…俺が好きだって言えば家で大人しくしててくれんのか?」
 大きく見開かれた瞳から読み取るに、この言葉はこの子供の心を傷つけるには十分な威力を持っていて、俺へのなけなしの尊敬だとかいう評価を裏切る発言だったらしい。
 しかし日頃思っていることであるだけにその文句はつらつらと唇から滑り落ちた。でも神楽が望んだのはこうゆうことで、新八は気づいた違和感はそうゆうもので、俺はつまりは酷い人間なのである。マダオというより夜叉というより畜生に近いのだろう。
 
 
 冬の始まり。江戸に初めての雪が降った宵の口。
 なじみの定食屋からいい気分で通りに出た俺の前に転がり出たそいつを見たときは、なんとも豪快に気分が削がれた。
 狭い路地から泥だらけになって明らかにどこぞで一戦交えてきましたって感じの鋭い眼光をして飛び出た新八は俺の顔を見るなり、ヤバイ、という表情をつくり、でもどこか誇らしそうに口元を歪めていた。
 なんなんだ。なんなんだよ!
 
 
「…ちくしょう!」
「…っ」
 力を入れてしまった肘からどうにか自分の手を引きはがす。今や怯えてしまっている新八は大層混乱しているだろう。基本、人は性善説に則っていて根幹は善人だとしか考えられない上に、一度に複数の悪意をくみ取れるようにこの子は育っていない。それが幸福だとか考えていた過去の自分を笑ってやりたい。しかし、この鈍感さにこそ救われている今の自分はなんなのだろう。
 今も、一身にくみ取るのは俺の感情で、探すのは己の非なのだこの子供は、新八は。
 どこにも救いがないように思えるこの瞬間にも俺の心は腕の中の存在に確かに許されている。
「ぎんさん…」
 伸ばされた腕に素直に沈めば大丈夫ですよ、と的外れな慰めが聞こえる。細く弱々しい俺の免罪符。独り闇を行く俺の手綱。もう一人であの暗闇は突っ切れない。
「ずっと、一緒なんだろ…?」
 お前がくれた言葉ひとつに縋ってる。みっともない俺をよく見とけよ。
 そしていつか後悔すればいい。俺の悲しみを知って胸を抉られるような悲劇に青褪めればいい。
 それまでは、決して俺の魂を手放すんじゃない。
「愛してんだよ、新八…」
 もう自分じゃどうしようもないくらいに。


(2010/1/29)
味わい尽くしたと思っていた失うことの辛さを度々再確認することになっても、
この尊い存在を手放すことなどできはしないんです。

拍手[8回]

PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

この記事へのトラックバック

この記事にトラックバックする

カレンダー

05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

プロフィール

HN:
三國
性別:
女性
自己紹介:
趣味は読むこと。本は心の麻薬です★

ブログ内検索

カウンター




MAIL

感想・要望・ツッコミ等々、 お気軽に聞かせてください

バーコード

最新トラックバック