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「俺とお前の十八番 3」

 お待たせいたしましたァ!……か?
待ってた人もそうでない人も、うっかり本音をゲロっちゃった先生とパチ恵のその後をお送りします。

無事完結しました。やっほーい!






   俺とお前の十八番 3
 
 
『お前が好きだ』
 
 何の色気も捻りもない言葉が俺の唇から滑り落ちた。それは文字通りあっと声を上げる間もなく滑り落ちたので、誰であろう言った本人にとてつもない衝撃をお見舞いした。
 固まった顔には冷や汗が顔を出す寸前だった。
 
「……俺は、お前の根性は好きだけどよ、発揮するなら俺のいないところでやってくれや」
 
 伸ばした腕の先はデコピンに落ち着いた。急な旋回をした思考回路にめまいがした。
 そんな俺の気を知る由もない志村はんむっとか地味な驚き方をして情けない顔で眉をはの字に下げた。
「…そんなこと言って先生一人でどうするつもりだったんですか」
「開き直るんじゃありません。何かあったら俺が困るの」
「でも先生二つ返事でしたよ」
「大体なぁババァの策略にまんまとはまってんじゃねェよ」
「さすが理事長ですよね。先生がめんどくさがるの分かってて私を同行させたわけでしょうから」
「そーゆーこと言ってんじゃないの」
「どうゆうことですか?」
「ああゆうババァはなぁ、一回味しめるとおっかねェって言ってんの。また厄介事に巻き込まれても知らねェからな」
「そうそう厄介事が近づいてくるとは思いませんが」
「頼まなくても厄介事にハプニングてんこ盛りにして押し付けようって輩はいっぱいいるのよ」
「なんかそれって先生みたいですね」
「おまえね…」
 肩を震わせてて同意を求められても。
 思わずぶち当たった墓穴に苛立っていると志村はでも、と切り出した。
「…でも、先生とだったら嫌じゃないっていうかなんていうか…」
「…おい、なんていうかで終わるんじゃねェ。丸投げか?先生は丸投げってこの世で一番かっこ悪いと思う」
 志村はふふふと笑うと綻ばせた口元を名残惜しそうに動かした。
「迷惑かけてすみませんとか、ありがとうございますとか、そうゆうのはまだ後にとって置きたいってゆうか…これはクラスのみんなも思ってると思うんですけど、見限ったり疎んだりするような大人からはみ出した先生の存在がすごく貴重で、とても放っておけないんです。うるさいし破壊力満点ですけど、まだまだ楽しくなるだろうって考えるともっともっと先生も巻き込んでやれって体が自然に動いちゃって」
 
 弾んだ声は教室にいるときのようだった。隣に神楽がいないのが不思議なくらいに。
 
「ね、先生。勘違いでなければ先生も同じこと考えてくれてるって思ってたんですけど」
 
 俺の自慢の生徒たちは可笑しな所で一心同体で悪巧みも人助けも一緒くたにしがちだが、そのメンツに俺も含まれていたらしい。迷惑この上ない。
「ばかやろう。俺を青春なんて虫唾の走るモンに巻き込むんじゃねェよ!ったく…」
「まぁまぁ。大人を困らせるのも今のうちらしいですしあとちょっと付き合ってくださいよ」
 
 殊更明るい声でわかる。こいつは俺を負かした気になっている。それはいけないと思うのに反論を始める前に夕食が運ばれてきて、向かい合わせで着席することとなった。酌をするという志村を断って手酌で飲んだビールはなんだか店で飲むのより旨く感じられて、空気が澄んでいるせいだとひとり思い至った。
 
 
 
 
「いだだだだあででで!!!ヤメロ神楽!!」
 
 入道雲をふんだんにあしらった清々しい青空に男の情けない悲鳴が吸い込まれていった。
 週明けの朝だろうがなんだろうが、銀魂高校3年Z組はフルスロットルのテンションの高さを誇る。その日も教室にはあろうとこか担任であるところの教師の悲鳴が響いていた。
 背中から飛びつくと同時に華麗なヘッドロックを決めた神楽は分厚い眼鏡の奥から冷えた殺気を放っている。
「うっさいアル。人を差し置いて温泉でつやつやキューティクルゲッツした罰アル」
「おめぇそれ嫌味だろ!こちとら髪にコシが出ていつも元気なやんちゃっ子がさらに縦横無尽に跳ね回ってて手ェつけれねんだよ!!」
「はんっ!知ったこっちゃないネ。神妙にお縄につくアル!くらえコブラツイストォォォ!!」
「ぐぎゃあああ!!!」
 やんやと周りのクラスメイトまで囃し立て調子に乗りやすい小娘はさらにテンションを跳ね上げる。それに混じって志村は笑い声をあげていた。
 
 結局俺は、俺たちの関係を前進させるどころか、「ご迷惑かけますがどうぞよろしく」宣言をされて短い旅を終えた。
 虚しささえ残るというのに、あの日の志村の言葉を俺は何度も噛みしめた。噛みしめれば噛みしめるほどため息が漏れる。それは何とも青臭い香りがした。
 共有する何かを欲しがったのは志村だけではない。それに気付かされた俺は学校に巣食うババアの思惑を初めて正しく理解することとなった。
 コイツの性格が真っ直ぐすぎるから使ってみようじゃないんだ。俺が、俺こそがこの一介の教え子と共有できる何かを望んでいたんだ。他とは区別できるなにかを。
 
 『どうせ騒ぎに巻き込まれるんですから知っておいたほうが心構え出来ていいでしょう?』
 
 そう満面の笑みで言われてしまえば抗いようがない。抗えないのは大人の性か、それとも単に俺がコイツに弱いのか。
 でもちょっと待てよ、と銀時は腕ひしぎを決められながら思った。
(男にあの武器が通用すると思われちゃマズくないか?ここはびしっと言っとくか?いやでもそうしたら俺に効力があると認めちまうことになるし、でもでもあれを見境なく披露されると危険っつぅか、勿体ねェつぅか…)
「…なにブツブツ言ってるアルか。まだヨユーがあるみたいアルなボウヤ」
「ち、違うんです神楽さん!!これにはのっぴきらない理由というものが、」
「問答無用!一青窈アル!これで終いネ!くらえカーテンコォォ―――ルッ!!」
「まじヤバイまじ死んじゃうから神楽様ァァァ!!」
 
 慌てた所でシャレにならない連続攻撃を防ぐ術は俺にはなかった。俺と志村が二人っきりで出掛けたことでコイツには怒る理由があるのだ。甘んじて技のデパートおみまいされ無事生還したあかつきには、今は笑いながら俺たちを見ている志村が今夜のファミレス行きを提案するのだろう。そうすればおてんば娘の機嫌も立ち所に直ってしまう。
 それはいつもの光景。笑顔を作るのが得意なコイツの十八番。



:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::2010/12/23::::::

申し訳ありません。と、まず始めに謝らせてください;
付き合ったり、両思いになると思っていた方がいたら期待を裏切ってすみませんでした;

銀八は持ち前の器用さで切り抜けるかなと思いまして。
今の時間もとても大事なことは嫌というほど分かっているので、卒業までは待て位できる、と
自分に言い聞かせているといいと思います(笑)
ただ多分にちょっかいは出しますが。

 


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