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「俺とお前の十八番 1」


おっっっひさしぶりでございます!!
永かったスランプを死ぬ思いで脱して、今ここに帰還いたしました!

書けなかった理由は前記事の通りなんですか、いやぁ~自分でもビックリするほど書けませんでしたぁ・・・
過去の銀新神作家さんたちの作品に浸り「あの頃はよかったわ・・・」的な感傷に浸るとか、
まだまだ早いぞ自分!周りを見れば轟々と銀新愛が燃えているじゃぁないかァッ!!

・・・と、どこのスポ根漫画的復活を果たしたわけですが(どうでもイイですねそうですね)
復帰後一作目は「俺とお前の八卦」続編、3Zワールドにょたパチ風味でございます。

で、まことにKYで申し訳ないんですが、舞台は夏真っ盛りでお送りさせてください。
なんせ書き始めたのが夏だったものでそのイメージからは脱せませんでした・・・
それでもイイぜ!という稀有な方はつづきからどうぞ~





   俺とお前の十八番
 
 
 
 俺はそのとき浮かれてなんかなかった。
 それでもあいつの周囲が輝いて見えたのは、雨上がりで空気がよく澄んでいて、その上あいつが真っ白いワンピースなんぞ着ていたからだ。
 
 休日の駅前はカップルやら家族ずれでごった返していた。そん中でじっと立ち止まり、道の向こうを睨んでいる俺は相当浮いてるといえるだろう。
 それでも、だ。俺はその場を動く気は無かった。
 俺が睨む先はこの駅においてよく待ち合わせに使われるジャスタなんとかいう銅像のあたりだ。その真下に陣取って、ヤツはいた。
 いつものおさげにいつものメガネ。それらはどんな変哲もあってはならないとでもいうように夜以外は不変なのだ。しかし問題は首から下だ。
 衿のついた白いワンピースに華奢な足。足元のベージュのパンプスには花なんぞ咲いている。
 平たく言えば、…アレだ。つまりはアレだった。
 
 
 普段の倍は落ちたテンションで待ち合わせの人物に近づく。
「はよーさん」
「あ、先生。おはようございます」
 雑踏の中に俺の姿を認めた志村八重は一瞬、安堵したように顔を綻ばせ、次の瞬間には眉間に皺を寄せて表情を険しく変化させていた。
「先生遅いですよ。電車出ちゃうじゃないですか」
「んだよ、まだ10分もあるじゃん。ヨユーじゃん」
「引率するべき人が甘いこといわないで下さい。慣れない土地に行くときは普段の倍は時間がかかるものと思わないと」
 何故俺が休日の朝っぱらから生徒に説教されなければならないのか。フカフカのふとんと近所のケーキ屋の新作フェアを返上までしているというのに。こんな心底ダルイことをしている原因はというと全て高校に巣食うあの人外ババアのせいだった。
 ああ、思い出したらまたイライラしてきた。
 
 
 
 事の発端は数日前の放課後にさかのぼる。
 校内で部活に勤しむ生徒の掛け声が遠く聞こえる。そんなのどかな銀魂高校で平穏を全身で満喫する教師が一人。
 3人掛けのソファに悠々とそれこそ全身を弛緩させて腰かけ、口の中で飴ちゃんを転がす男の頭の中は猛暑が過ぎ去ったこの晴々とした気候、…とは全く無関係に年中平和だった。
 
「アンタに仕事頼みたいんだけどね」
 
 綿飴に似た雲から視線をずらすと、こちらには身体によろしくない紫煙を吐き出す妖怪が一匹。ゆったりと腰掛けたソファからだらしなく投げ出された足を気持ち引き寄せる。
 
 ここは銀魂高校の理事長室。別名、魔界の入り口だ。
 生徒の間でまことしやかに囁かれている噂では、このお登勢理事長がこの部屋で魔物を飼っていて、学園に都合の悪い人物を密かに葬っている、ということになっているが実際はそんなことはない。まずそんな都合のいい生き物(?)を飼っていれば一番に自分がやられているだろうし、その噂を流したのは他でもない、銀八自身だったからだ。
 生徒の明るい笑い声というのどかなBGMの中、妖怪は逆光を背負い薄く笑った。
 薄い唇の上では鋭い眼光が爛々とこちらを見つめている。それを死んだ魚のような眼で受け止めて一言。
 
「断る」
「いいから話ぐらい聞けよコノ給料泥棒」
普段から態度を改めようとしない銀時には慣れたもののようで、青筋の一本も浮かぶことはなかった。
「毎度のことだがタダでとは言わないさ。ちょっと届けものを頼まれてくれないかい」
「ダリィ」
「そうかい、坂田先生はボーナスいらないみたいだねェ?」
「要るに決まってんだろうが!パワハラ反対!」
 これ以上薄給に磨きをかけられてたまるか!という思いを込めてにらんでも、妖怪にとってはどこ吹く風で。
「…いいかい?郊外の老人ホームで療養中の知り合いにこの書類を届けるんだ。相続に必要な大切な書類だからヘマすんじゃないよ」
「……」
 掌の上でいいように転がされているようなこの扱いは気に食わないが、糖分とジャンプに命を懸ける銀時にとって、数少ない、ないがしろにできない人物であるのも事実だ。それも駄々をこねればどんな理不尽な方法で泣きを見るかわかったもんじゃない。銀時は一度大きく首を回すと盛大にため息をつき、手取りを減らされ同僚にたかるのも面倒だと腹を括った。
「…わぁったよ。そん代わりボーナスは3割増しで…」
「ふざけんじゃないよ」
 瞬殺。一瞥もくれずに却下。しかし、しょげる前にふいにお登勢理事長は何事か思い出した様子でこちらを向いた。
「あぁそれと、今回はあんたのクラスの志村八重連れていきな」
「あ?…ンでアイツが出てくんだよ」
「そんなの、アンタのクラスで老人ホームの見学が役に立ちそうなのはあの子くらいしかいないだろうさ」
 めんどくさそうな表情の裏側を読もうとするようないやぁ~な間のあとに理事長は続けた。
「なにか不都合でもあるのかい?」
 分かっていながら念を押す。隠して見せる気もない挑発じみたにやけ顔に今度こそ嫌気がさした。俺はそんな安いからかいに付き合うほど子供じゃないんだと自分に言い聞かせねばならなかった。
(だからこのババアの相手はしたくないんだ)
 心の中で再確認しながら眉間にしわを寄せてみせる。
 本来なら気迫が感じられるであろうそれも、この人物の前では幼子の駄々っ子ほどの威力しか持たないのだろう。
 それをわかっていながら、最後の抵抗をしてみせる。
 分かっていても、こればかりは承諾し難いのだ。
 
「…ったく、人使いの荒いバアさんだな。そのうち友達いなくなるから絶対だから」
「かわいい生徒のためさね。経費出してやんだからそんぐらい骨折っても罰は当たらないと思うけどねぇ」
 そういって理事長は袂から慣れた手つきで茶封筒を取り出して机上に乗せた。
 依然として紫煙の向こうから向けられる視線を感じながら銀時はのろのろとそれに近づく。
 最後に一度だけ視線を絡めて、深いため息とともに骨の折れるであろう旅の軍資金に手を伸ばしたのだった。
 
 
 慌ただしく車内に駆け込んだ俺たちは息を上げたまま揃って座席に腰を下ろした。
「だ、…だから言ったじゃ、ないですかッ!どこが、ヨユーですかッ」
 息を整える間もなく小言を言ってくる。休みの日くらい怒るのやめればいいのにと、クラーの冷気に安堵しながらしみじみと思うわけで。
「ちょっと!先生聞いてます!」
「あ~…」
 中途半端な反応しか返さない俺にさらに詰め寄る気配がする。
 そりゃそうだろう。俺は無視しているように見えるだろうさ。
 でも違う。それは違う。
 
 気配が近い。
 
 ただそれだけのことで俺の思考回路はショート寸前だった。
 微笑ましくて、ありがたくて、でもほんのちょっと煩わしいと思っていた身長差が今はぐぐっと縮まって、それに気づいてしまった俺の失態を逃がすこともできずに、思考を停止するよりほかなかったのだ。
 そうこうしている間に、もう!という一言を残し志村は俺を叱るのをあきらめた。
 ほぼシカトしてしまったというのに、ホントよくできた生徒だ。
 
 しきりに手で顔を仰いでいる隣を盗み見れば、その首元でなにかがひらひらと動いているのが見えた。よく見ればそれは襟についているタグのようで、変に裏返って襟の外側まで顔を出しているらしかった。
(あれが肌にあたるときのむず痒さって絶妙だよなぁ)
 思い出しただけでゾクゾクぅっと背筋に何かが走る。
 これは教えてやらねばならないだろうと、俺は口を開いた。それはもうほんの気軽に。
 
「志村、襟からタグでてんぞ」
 
 茶化すように言った途端、志村はばっと勢いよく振り返り、首に手をやりながら真っ赤な顔で弁解を始めた。
「あのッ、…その、これは…おかしいな、ちゃんと取ったと思ったんですけど、値札…」
 
 その一言で再び俺の全身に衝撃が走った。熱い血が顔に上ってくるのを感じる。
(ヤ、ベェ…ッ!!)
 
「…違ぇよ。値札じゃなくてタ、グ。裏返って出てきてんだよ」
「あ…そっち、ですか……すみません」
 いや、謝られても困る。すでに俺のこの体の熱はどうしようもないのだから。
 そして俺は左手でそっと、自分のズボンの尻のあたりを確認する。万が一、値札なんぞついていないかと。
 
 なんてったってこのベージュのスラックスも下したてだからだ。
 
 普段、忙しい教師生活を送っているのと元々そういった方面に頓着がないせいで、プライベートは徐々に疎かになっていった。
 そうして気が付けば手元にはくたびれたシャツと着古した感満載のスラックスしかなかった。
 だからこの機に久々に服を新調したのだ。
 断じて清潔感溢れる私服で好感度ゲットしようとしていたとか、普段と違う男らしい俺を演出しようとか思ったわけではない。ただのついでがたまたま志村と重なっただけであり、もしかしたらそういった理由で同じ行動に走ったかもしれないなんて推測に心を躍らせてはいけないのだ。
 でも、もしもだ。もしも、風に揺れる白いプリーツが俺に見せるためだったとしたら、小躍りどころでは済まないかもしれない…
 
 
「どこが郊外だよあのババァ。れっきとした山中だろうが」
「空気が澄んでていいところじゃないですか」
 
 理事長に渡された地図を頼りに電車を乗り継いできたその町は、四方を山で囲まれた小さな温泉街だった。駅前とそれに続く土産物屋がある通りがメインストリートで、遠くに見える煙は温泉から立ち上る湯気のようだった。
 浴衣を着てすっかり観光モードの客に紛れてバス停へ向かう。目当ての施設はここからさらに20分ほど行ったところにひっそりと建てられているからだ。
 斜め後ろを歩く志村が土産物屋をちらちらと盗み見しているのを感じつつ問答無用で先導した。
 
「あそこの売店で飲み物買ってくる。なにがいい?お茶か?それともお茶か?」
 
 待合室のベンチに腰掛け、早速うなだれていた頭が勢いよく持ち上がった。言われなくても分かる。その顔には(え?先生が生徒におごるなんて…)と嫌に明白に浮かんでいて、俺は大人げなく青筋を浮かばせてみせた。
「なんですか、そのえれぇ失礼な顔は?先生だってお茶買うお金くらい持ってます~」
「あ、っと…すみません…じゃあお茶でお願いします…すみません」
「…そうじゃないだろ」
「…え?」
「こういうときはぁ“ありがとうございます先生様~。尊敬しちゃいますぅ~”だろ。いやちょっと待て。やっぱ“今度パフェおごりますぅ~”にしろ」
 ぽかんとした顔をした志村と、ようやく目があった。
「…生徒にたかる教師は尊敬に値しません。だいたいパフェは禁止されてるはずですよね?」
 いつもの勢いはないけど出来は上々。力なく微笑んでみせる志村の顔を見てこっちもようやく肩の力が抜けた。学校じゃないと油断していたようだが、お前の本来の役割はツッコミだと、これで嫌でも思い出しただろう。
「仕事終わりのパフェは別勘定なのしらねぇの?サラリーマンのビールしかり、オーエルのご褒美ディナーしかり。全国共通だからコレ」
 駄目なものは駄目ですよ、という小言を背中で聞きながら売店へと足を進める。
 小言を言われるのは良いが、ずっと緊張しっぱなしでいられるのは嫌だと思った。男慣れしていないあいつに“引率の先生”たる俺が、今気を使ってやれるのはこのくらいだろう。
 思惑通りにまんまとリラックスしてくれた単純さを可愛、…じゃなく、微笑ましく思いながら飲み物を買って店を出ると、志村に声をかける男の姿が目に入った。
 その男は逃げ腰になって席を立った志村の腕をつかんだ。
「…ッ離してください!!」
 小さくだがその声が聞こえた瞬間、デスクワークで鈍った俺の右肩が久々に唸った。
 
「ォルァァアァァッ!!」
 
 俺が気合いっぱいに投げたものは青年のこめかみにヒットした。
「…ぐぁッ…!」
 青年はそのまま上体を崩し、しりもちをついた。
 急な展開についていけず、無様にあおむけに倒れる人物を見下ろしている志村に急いで駆け寄る。
 
「志村ッ!!」
 
 
 その声に瞬時に反応したのは不審人物のほうだった。 
 体勢を立て直すと志村には目もくれずにその身を翻し、あっという間に雑踏に紛れて姿を消してしまった。 そのあとには無残に角が凹み、中身が泡立ったジャスミン茶がころがっていた。
 





前回と似たような終わり方になってしまいました。うぅむ~
どうにも対パチ恵だと、銀八先生がはりきってしまうようです。

ちなみに、冒頭のシーンで某有名作家さんの神BL漫画と似たような表現をしていることを
書いてから知ったのですが、そのまま残してアップしました。
銀八には目いっぱいやきもきしてもらいたいという所存でございますので、どうぞ悪しからず。


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