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「賢者の言い分」

湿気を伴った暑さにやられて絶賛脱力・無気力状態でございます。ぷしゅーーー。

そんななか書き連ねた言葉はやはりどこか気だるげでくすんでおりますが、
これも一つの銀新かと、思い悩んだ末にアップいたしました。

にょたパチ続編も鋭意創作中です。
もし待ってくださっている方がいましたら長らくお待たせしてしまってホントスミマセン!!!;
アイスをお供にどうにか完成させたいと思います。



   賢者の言い分
 
 
「だから、呪いだろ」
「そんなわけありません」
 力を失い始めた陽射しをバックに椅子に腰掛ける上司を睨む。
 信じられないことを常と変わらない調子で言うから、今この場所だけが現実から切り取られた気がした。
「んじゃ呪術」
「違いが分かりません」
「あン?呪いってゆうのはな、その前提として悪意を伴う行為でェ、」
「定義なんてどうでもいいんだよ。せめておなじないとか」
「だめだめ。そんな叶えばいいなぁ~的なもんじゃねェだろ?」
「じゃぁ・・・契約、とか」
「契約は破棄するためにある」
「んなわけねェだろ!!あんた契約をなんだと思ってるんだ!」
「俺ァちゃんと行動と結果が伴わないとイヤなんだよ。その点、呪いは動機も結果もパーフェクツじゃね?」
 そんな何で分からないんだって顔されても困るのだが。
 目だけは真剣に僕を貫いている。そろそろ反論のしようがない。
 その事実に神経が揺さぶられる。
 こんな窮地に眩暈がして、期待に胸が ――
「・・・そんなんしなくてもお互いの想いだけでどうにでも・・・」
 懸命に搾り出した反論は陳腐な上に平凡で。
「それが一番信用ならねェモンの代表だろが」
 呆れたと言わんばかりに一蹴される。
「あぁもういいから、心して聴けよ新八」
――銀さ、」
 黒い予感に支配された僕の神経はいまや全身で次の言葉を欲していた。
 
 
「“俺はお前を愛してる。お前はそれを受け入れた。だからこの先万が一、お前が他のヤツに懸想したらそん時は、新八 ――”」
 銀さんの薄い唇をここまで一心に凝視したことはない。
 
 
「“俺がお前を殺してやる”」
 
 
 淡々とこの身に投げかけられた言葉は確かに、震える僕と、恐れを抱くほど綺麗に微笑むこの人自身の周囲に薄い膜を張ったようだった。
 その中で一度深く深呼吸した。
「銀さん・・・」
「・・・忘れんなよ新八。もう呪いかけちゃったから。バリヤーなしだから」
 
 どこから来るものなのか。眉間に力を込めても手の甲で口を塞いでもみっともない嗚咽と涙が止まらない。
 見て欲しくないのに、どこか満足げな銀さんは逃げ腰の僕に一歩近づいて震える身体を捕まえた。
 穏やかな表情が歪んだ視界いっぱいに広がる。
 彼の匂いと安らかな息遣いが僕の心を宥めていく。
 
 
 それでももう、僕の心が真に凪ぐ事はないのだろう。
 
 
 
「・・・銀さんこそ忘れないで下さいよ」
「忘れるわけねェだろー。・・・いや、でも待てよ。つぅことは破ったら俺 ――
「銀さん」
 
 その先に言われることは分かってる。だから聞きたくなんかない。
 いまやこの人の心は僕の映し鏡だから。
 
「銀さん、“愛してますよ”」
 夕日が目に染みる。僕はちゃんと微笑んであげることが出来たんだろうか。
 
 
 
 
 この人は愛のことを“生を縛る呪い”だといった。
 
 だったらそれは、
 
 詰まる所それは、
 
 お互いの死をも甘い香りで満たす僥倖 ――
 
 足りえるのかもしれない
 
 
(2010.05.30)

* * *

あなたがそれで安心できるのなら共に唱えましょう。
その先にあるのは永く待ち望んだ愛に裏打ちされた日常なのだから。

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