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「片道切符」

ご無沙汰しておりました。久しぶりのアップです。

各地で開催されていたステキイベントへ行けなかった反動か、
いつも以上に銀新に飢える中パソコンへ向かい、よーし!書くぞぉ!と気合を入れた結果、
なぜか山崎が登場しました。・・・アレ??
しかもこの子、なんか病んでる・・・

というわけで、作るだけ作ってずっと気にかかっていた”新八受け”カテゴリー、初のコンテンツをお送りします。
山→新への需要があることを願って・・・





片道切符
 
「あ、万事屋の旦那」
「ん。今誰もいないところから声が聞こえた」
「ふざけんで下さい。目の前にいます」
「なんだジミーか。ゴメン地味すぎて気付かなかったわ」
「この人腹立つ。分かってたけど腹立つ」
「地味なヤツがこんな暗がりでなにしてんの。黒子に転職?いいんじゃねェ?天職だと思うよ俺ァ」
 
 そういうとニヤニヤと、どこぞの一番隊隊長と瓜二つな笑みをうかべる。
 不気味な笑いを引っさげて闇夜に浮かぶフワフワのシルエットは童話の中の幽霊そのものだ。
 まぁいい歳だし全く恐くはないが。
 
(新八君こんなの相手してんのかァ・・・)
「おい。今失礼なこと思ってんだろ。気味悪ィ顔すんじゃねぇ。しばくぞ」
「いえ、全く思ってないです。ちなみに黒子でもないです。まぁお察しの通り監察の仕事中でして。出来ることならスルーして欲しかったんですがね」
「アレ?ジミーが消えた」
「目の前にいます。月が陰っただけです」
「あ、そうなの。ビックリさせんじゃねェよ~」
「・・・」
「ところでジミーさ。ここら辺でウチのジミー見なかった?」
「新八君ですか?そんなん言ってたのバレたら怒られるんじゃないですか~?」
「地味は地味だろ。で、どうなの?見たの?見てないの?」
「見てません」
「・・・ホントかよ」
「えぇ。俺は今日一日この路地で張ってたんですが、一度も真っ当な人間には出くわしませんでしたよ」
「へぇ。そりゃご苦労さん。んじゃテメェにゃもう用はねェな」
「随分な物言いですね」
「いやマジで。金輪際、ウチにテメェのへなちょこ探偵術は要らねェっていってんの」
「・・・」
「何も知らねェガキ捕まえて、自分の技見せびらかして先生ごっこすんのは勝手だがな、やるんなら他所でやれ。なんかあったらおめぇさんがあのゴリラの相手してくださるってのか? ――あいつは俺が預かってんだ。余計な真似すんじゃねェよ」
「なんのことやら分かりませんが、一応心に留めておきます」
「・・・ケッ。いい度胸してんのな。 ―――ま、そーゆうことで。しっかり働けよ監察君」
 
 身を翻して狭い路地を行く銀色は瞬きの間に闇へと消えて、そこには再びきな臭い静寂が満ちた。
 
「つぅか、旦那こそ何でこんなとこにいるんだろう。 ――――ね?新八君」
「・・・えぇ」
 
 傍らの闇に話しかけると華奢な少年の姿が浮かび上がった。
 
「あ、大丈夫だよ。旦那は行っちゃったから」
「そうですか・・・」
 
 寒さからだけではない、体温を無くした白い肌は月光に映えて山崎の網膜を焼いた。
 ソレから目を逸らして、長時間同じ体勢で壁に張り付いていたために固まった身体をぐぐっと伸ばせば、先程の息苦しさが多少払拭された気がする。
 放心したように中空を見つめる少年は僅かに瞬きをするのみ。
 それでもその闇の中の双眸にはひたむきで真直ぐで、いっそ悲しいほど痛々しい決意が確かにあった。
 
 俺みたいな人間が、ソレから目を逸らすのは大変な苦労がいることを、誰でもいい、分かって欲しかった。
 そうしたところで自己満足なのは重々承知でお願いしたい。
 分かってくれる者とこの狂気を分け合いたい。分け合わなければ文字通り気が狂ってしまいそうだから。
 
 
 
 長く監察として闇に身を置いて、得た物は情報という名の敵を追い詰める武器であり、仲間を助ける命綱だった。
 そこに喜びはない。達成感こそ有りはすれども、決して喜べるものではない。伴うのは人間の汚い裏側を覗いた後の後味の悪さ、それだけだ。
 何時からか人生から喜びが消えて、それがいつか思い出せなくてなんとも思わない自分を、やっぱりなんとも思わなくて。
 すりガラス越しに見る世界はそれなりに居心地がいいし、
 眩しいものを追いかけたくなる衝動なんて長いこと忘れてた。
 それが、この子を目の当たりにして俄かに蠢き始めた。
 喜ばしくはないであろう欲望と共に。
 ただ仲間と共に大義を追いかける日々がだんだんと歪んでゆく。
 
 あの子が闇で光ったら、  どんなにか、  美しいんだろう  ――
 
 
 ホント自分でも思うよ。コイツいかれてんじゃねェって。
 でもね、全てはすりガラスの向こうの話。泡沫の出来事なんだよ?
 この滑稽で曖昧な世界に、連れて行っちゃぁだめかなぁ・・・?
 この子を大事に思う人たちには気の毒だけど、純白の愛情のために彼が俺の手を取る日はそう遠くない気がするんだ。

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