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「俺とお前の八卦」・後編

「俺とお前の八卦」後編でございます。

書いているうちにですね、こんなに可愛いパチ恵と会話したり笑いあったり触ったり
できる銀八に、本気で嫉妬しかけました・・・あはははh(ry

くそう。お前らなんか、一生そうやってイチャイチャしてればいいじゃない!!

(本編はそんなにイチャコラしてませんが続きからどうぞ)







   俺とお前の八卦
 

 
 パチ恵は少しだけ頬を腫らさせたまま、いつもどおり教室にいた。神楽や九兵衛と笑いあって。
 でも、始業から帰りのホームルームが終わるまで、一切俺と顔を合わせようとはしなかった。
 あんな事件に巻き込まれておきながら、俺の胸に縋って散々泣いておきながら、感謝と謝罪を伝えたからそれでもうあの事件はおしまい、とでも思っているのだろうか。
 
 おとといの土曜にあった事件は、最終的に犯人達を抹殺するといって聞かない銀時を宥めるのに警察が死ぬほど骨を折って幕を閉じた。
 銀時としてはまだまだ殴り足りなかったし、警察なんぞ呼ばずに東京湾の魚にお世話になったほうが絶対いいと信じて疑っていなかったのだが、騒ぎを聴きつけて集まってきた付近の住人にあっさり通報されてしまい、どちらも叶わぬ夢となったのだ。
 腹のすわりの悪い俺と、頬を腫らせたパチ恵は調書作りに明け方までつき合わされ、ついでに個別に説教までされて漸く解放されたのだった。
 正直なところ俺もパチ恵に言いたいことあは山ほどあった。それ見たことかと。
 しかし、終始俯き加減で疲れ切った様子を見てるとなんとなくそんな気もそがれて、「送っていくか?」なんて、自分でも気持ち悪いくらい下手から聞いていた。
 
 パチ恵の家の前に差し掛かるとくいっと袖を引かれてたので振り返った。
 視線は合わせないままで、それでも俺の袖を離すことはしないで、パチ恵は小さく呟いた。
 「すみませんでした。ありがとうございます」と。
 
 
 
 
「おい、パチ恵。ちょっと」
 
 日直が帰りの挨拶をするが早いか、鞄を引っつかみそそくさと教室を後にしようとしたパチ恵を呼んだ。
 教卓のまんまえに座っておいて、度台ムリな話だった。
 そしてこれが本日最初の会話だ。いや、会話なんて言えるものでもないのだが、扉の前で振り返ったパチ恵の眼差しは普段のコイツの口より雄弁で、放って置いてください、と強く主張していた。
 
「教師にガンタレてんじゃねェよ。恥じらいを持て、恥じらいを・・・」
「銀ちゃん!パチ恵を進路指導室に連れ込んでナニするつもりアルカ!?姉御に代わって成敗するゾ?コラァ」
「ッ・・・ぐっ!神楽、テメェ・・・」
 「まったく最近の若モンは」と、続けようとした言葉は横から襲ってきた衝撃でガスッと途切れた。
 
 俺の首に巻きつき本気モードで容赦なくスリーパーホールドを決めてくる。
(う・・・マジ、ヤバイかも)
 意識を手放しそうになったところで、訊きなれた救いの声が聞こえた。
 
「ちょ、ちょっと、神楽ちゃん!先生の顔青通り越して白くなってるから!止めてあげて!!」
 
 青ざめながらも止めに入ってくれたコイツにホント感謝。
 「えぇ~~仕方ないアルナァ」とか言いながらしぶしぶ俺の首から離れた神楽は、まだ遊び足りないような顔をしている。
 
 例え相手に対して怒っていようと、どんなにウザがっていようと、助けてしまうのがパチ恵のパチ恵たる所以だ。俺はひしひしと、若干のむず痒さと共に再確認する。
 
「サンキュ・・・志村」
「あ、・・・いえ・・・」
「神楽テメェ、宿題でもやって待ってろ。どうせ終わってねェんだろ?」
「宿題を学校でやろうなんざ、宿題の神に対する冒涜アル。定春と遊んでるから終わったらパチ恵も早く来いヨ」
「・・・うん、わかった」
 パチ恵はやけにしんみりと走り去っていく神楽を見送る。
 その姿に俺の心は一瞬折れそうになるが、ここで情状酌量するのは違うと思うのです。アレ作文?
 とにかく、コイツとサシで話をしないことには、俺はどうにも耐えられないのだ。
 
 
 
 
 漸くパチ恵を進路指導室に連行して、俺は窓に背を向けた席に腰を落ち着かせた。
 パチ恵に断りもなく懐から携帯灰皿と煙草を取り出す。
 と、てっきり向かいの椅子に座るかと思っていたパチ恵は俺の脇を素通りして西日の差し込む窓際に立った。
 
「・・・ここ、初めて入ったんですけど、西日がすごいんですね」
 
 窓の桟に手をかけてパチ恵が呟くように零した言葉。穏やかなコイツの声を久しぶりに聞けたことにひそかに安堵する。逆光云々ではなく、背を向けているためにその表情は読み取れない。ただ、その雰囲気から、もう怒っている雰囲気は無いように思った。
 
「・・・あぁ。寝るときはスンゴイ鬱陶しいぜ」
「そうですか・・・」
「・・・」
 
 てっきりツッコまれるかと思っていたが、スルーされた。
 居た堪れない。
(あ゛――、もうヤダ!恐いよコノ子!誰なの!?つぅか何キャラ!!?)
 
 耐え切れない沈黙を打破するべく、汗の滲む手を握り締める。
 
「・・・で?志村。バイトやめる気になった?」
 
 俺は只、コイツにもうあそこでのバイトをやめて欲しいだけだ。
 俺と同じくらい舌の回るこいつだから。無駄な迂回は必要ないと思った。
 案の定、俺の言葉に振り返ったヤツは、やっと来たか、みたいな腹を括った顔をしていた。
 
「・・・私やめるなんて一言も言ってませんけど」
「あんなことがあってもか?・・・どうせ、姉ちゃんには話してねんだろな?」
 
 そういうと、痛いところを突かれたのか、パチ恵の顔がグッと苦い顔になった。
 
「・・・余計な心配かけたくないですし・・・」
「それのどこが余計なんだよ。これを機にお姉さんも考えを改めればいいと思うよ、先生は。世間には万が一、億が一って変態オヤジがそこらじゅうに転がってんだよ」
「でも、もうこんなこと起きないように気をつけますし、ママだって店番意外はやらなくていいって、」
「買出しもか?そんなんおまえ雇ってる意味ねェだろ。あのババァも大概お人よしみてぇだな。だから早く違うバイト探せっていってたんだよ、全くよぉ」
「だからっ、今ぐらい給料が良いところないんですって・・・――」
「んなコトねェって、新聞配達とか、短期で高収入のヤツとか、そんなんアンだろ」
「でも、新聞配達は姉さんが危ないって・・・」
「あぁ、そうだろうな。毎朝同じ道通ってたらすぐ変態の餌食だろうからな」
「そんなにあちこちに変態がいてたまりますか」
「イヤ分かんねェよ?」
 
 気丈にこちらを睨みつけるパチ恵はさすが、泣いてはいなかった。本来涙もろい性質ではあるが、こういう場面で涙を武器にしたりはしなかった。
 己の思う正しい道を貫こうとするとき、コイツの目は一層輝くのを俺は知ってる。
 
 
「・・・なんで、信じてくれないんですか」
 
 
 寸分も逸らされない視線の奥の、大きな瞳が揺れた気がした。
 
 
「・・・え?」
「先生は、私の事が信じられないんですか?」
 
 確かに偶にみせる、あの見惚れるような強い眼差しを向けているはずなのに、その表面が水を湛えていくようで、俺の内心は俄かにざわめきだした。おととい見てしまった、こいつの泣き顔がフラッシュバックした。
(なんで・・・)
 
 なんで、ここで泣く。大概分かりやすいというか、分かり易過ぎるヤツだと思っていたのに。コイツが傷ついていたのは俺の全然預かり知らないところだったらしい。それを後悔しても、もう、遅い。
 
「・・・信じる信じないの問題じゃねぇだろが」
「でも、なんども安全だって、安心してくれって言ってるのに、先生はちっとも私のこと・・・――」
「だから、なんかあってからじゃ遅ェんだよ!なんで分からねェんだ!?普段は物知り顔で説明キャラしてるくせに!!」
「好きでやってんじゃないです!アンタ達がものを知らなすぎるんですよ!」
「そうかよ!だったら説明キャラなんか止めちまえ!ついでにスナックもな!!」
「何ドサクサにまぎれて承諾させようとしてるんですか!先生だって私が不器用なのしってるでしょう!?そうなると、雇ってもらえるところも限られるんです!それに、私の収入無いとホント家計が苦しいんですってば!」
「ッ・・・だったら夕飯くらい俺が食わしてヤラァ!!」
 
 勢いに任せてそう叫ぶと、パチ恵の動きがピタリと止まった。お互い整わぬ息でゼイゼイしている。
 
「・・・冗談は、止めてください」
「冗談なんかじゃ、ねェよ。・・・公務員なめんなよ」
「・・・・・・要りませんよ・・・そんな、ほどこし・・・」
 
 思いがけない物言いに、カチンと来た。
 
「はぁ!?ホドコシだぁ?どこがだよ、俺ァお前の担任だぞ?担任が生徒のメシ世話しちゃいけねェって言うのかよ!!」
「だから・・・ッ!・・・私達は、そんなもの頼りにしちゃいけない・・・駄目なんです」
 
 そういうパチ恵の瞳には、だんだんと焔が灯っていくように見えた。
 
「――施しは言い過ぎました・・・けど、それが優しさから来るものだろうと何だろうと私は要らない・・・私達は、強くあらなきゃ。父さんと母さんを、心配させないくらい、強くありたいんです・・・」
 
 くゆる焔はいまや爛々として、まっすぐに俺を射抜く。
 
 
 
 あぁ、そうか・・・――コイツが持っていた強さの根源はココなんだ。
 
 
 頼るものは姉の細肩一つ。互いに寄り添って生きてきたのだ。
 
 人並み以上にアレコレ経験してきたこの俺でさえも預かり知らない困難を抱え、
 
 手に手を取り合って、その顔に笑顔は絶やさず。
 
 全ては、折れない心の下に―――
 
 
 
 だったら俺は、その強さを護るしかないんだろうなぁ、めんどくさいことに。
 
 なんてったって、
 
 出会って高々数年の俺を、
 
 俺の魂を、虜にして離さない呆れるほど真直ぐで潔い、綺麗な魂を持ってるコイツだから。
 
 
 
 
「・・・わぁった」
 
 
 
 お前の輝きを陰らすものはあってはならない。
 
 だから、俺が、その全てを取り除こう。
 今は亡き両親と、信頼しているといいながらも今もどこかでお前を心配しているだろう姉貴の変わりに。
 
 
 
「先生・・・」
「俺の負けだ」
 
 
 
 そういって、数時間後に解かれるだろう三つ編を手に取る。
 しっとりと重いその感覚に、あの夜暗闇で胸に引き寄せたコイツの熱が思い出された。
 間に合った安堵と再び手の内に帰ってきた歓喜でつぶさんばかりに抱きしめた。
 
 その喜びは、安堵は他の誰にも渡さない。
 誰かの手に任すとするならソイツの頬を一発殴ってから、いや、たぶん4分の3殺しにしたってムリだろう。
 
 
 
 急に黙り込むと、目の前のパチ恵が気まずげに視線を泳がせた。
 
 
「・・・何?もしかしてやっぱやめる気になった?」
「ッ!・・・違いますッ」
「だろうな・・・それとも、俺のいってること信じれねェの?」
 
 
 クルクルと三つ編みの先を玩びながら至近距離で顔を窺う。
 
 
「・・・先生の言動は信頼に値しません」
「・・・ひでェな」
 
 
 
 俺は今の上気したようなコノ空気はキライじゃないな、なんてしみじみ思う。
 コイツの青春の1ページになれたみたいで気分がいい。
 居心地が悪いだろうに、それでも俺の三つ網をつかむ手を外させることもせず、モジモジしている。
(ッッかああぁぁぁ~~~・・・ッ!!・・・ッいいね!やっぱコイツいいッ!!)
 林檎のように赤くなったその顔を再びこの胸に感じる日が待ち遠しい。
 
 
「そん変わり、俺あそこの常連になっから。ウザいとか言うの禁止な。おまえになんかあったらゴリラの姉ちゃんに殺されるから俺」
「・・・先生、いままで違う気でいたんですか」
「・・・は?」
「週3日。多いときにはそれより多く通っていれば、立派な常連っていうんですよ」
「あ、そうなの?さすが、説明キャラは知識が豊富ね?パチ恵ちゃん?」
「これは常識の範囲内です。・・・・・・っていうかいい加減、人の髪で遊ぶの止めて下さいよ。・・・まったく毎日毎日・・・」
 
 
 ま、仕方ないだろうね。
 なんたって俺は、お前を唯一堂々と護れる、担任の先生ですから。
 
 俺はこのとき初めて、担任なんてものをあてがってくれた理事長に感謝した。
 


担任であろうとなかろうと、付きまとっていたであろう事実。
彼の執念を思うとゾッとします。イイ意味で。

そういえば、ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございました。
精進します。

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にょたパチLove

  • ウノーサノー
  • 2010/03/15(Mon)02:35:51
  • 編集
はじめまして、3Z銀パチ凄く面白かったです。
一応水商売なのに全くスレてないしっかりものだけどうっかりものなパチ恵ちゃんが理想的な可愛さでしたvvv
そんなパチにメロメロでピンチはきっちり駆けつける坂田先生もかっこ良かったです。
本当に夜叉になった時の坂田にボルテージも最高潮でした!
できればシリーズ化して欲しいです。
ちゃんと鈍感なパチに振り回されて焦る先生の関係が凄く萌えました。

どの話も素晴らしい!!

  • kentan
  • 2010/03/22(Mon)21:43:59
  • 編集
初めまして。今回のお話に加え、過去の銀新話も拝読させていただきました。
どの話も起承転結がしっかりしていて、ドキドキしたりハラハラしつつ、ニヤリとさせられるお話ばかり。とても楽しませていただきました。
引き続き楽しみにしております。

コメありがとうございます

  • 三國
  • 2010/03/23(Tue)23:28:05
  • 編集
はじめましてkentan様。
過分なお褒めのことばをいただきまして恐れ多いやら嬉しいやら。
ドキドキしすぎて心臓が痛いです。

起承転結は自分でも気をつけていることでして、ともすればダラダラと長く書きすぎる自分に日々呪文のように言い聞かせております。
これからもどうぞお気軽にコメントくだされば幸いです。

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